1 とちぎの規模
    (データは平成一六)
 加盟校数は四九校。うち休部一。この五年間で八校廃部となりました。ブロック大会(地区予選)参加校は計三二校。残念ながらこの数が実働というところです。五月総会時点での総部員数は三九三名。この数は五年前のなんと三六%減。前年比五〜一〇%ずつ減っています。さらに顧問の交代は今年二二名。率にして四二%。これは過去最大規模でした。関東大会黒磯会場運営の直後とはいえ、残念な数字です。この三つのトレンド、「廃部」「部員減」「顧問交代(逃亡?)」は全国共通なのでしょうか? 有効な打つ手がなくいまに至っています。

2 とちぎの躍進
 しかしながら高校演劇とちぎは元気です。悲願であった「とちぎから全国へ」を平成一一に達成(石橋高)すると、以後、作新、宇都宮女子、宇都宮女子と全国出場が続き、かついずれも優秀賞を受賞。そして平成一六鳴門大会ではついに作新が全国最優秀を受賞しました。この間わずか六年。六年間に五度の全国出場はとちぎの誇りです。
 とちぎの良さは、関東出場、全国出場校を回りの顧問が応援すること。関東が決まると、壮行祝賀会、そして応援観劇旅行計画と話がまとまっていきます。生徒どうしでも、関東出場校への壮行会を男子校演劇部員が行うなどして士気を高めます。関東・全国での活躍を「とちぎの活躍」としてともに喜べる雰囲気、一体感、これが実はとちぎのほんとうの誇りなんだろうと思っています。

3 とちぎの活動
《生徒対象講習会の二本の柱》
 技術講習会と合宿講習会。
 技術講習会は、主にスタッフとしての知識・技術の向上を主旨とします。年四日の日程で、第一・二日目はモデル上演校をもとに舞台用語・構造について学習します。舞台での安全指導、著作権講習も行われます。講師は県内顧問が毎年交代であたります。第三日目は関東出場校をモデル上演に、演出演技面の講習を行います。第四日目は「部活動運営・作品制作過程」または「メイクアップ実技講習」を隔年交代で行っています。今年は福島県から石原哲也先生をお招きして『チェンジ・ザ・ワールド』を素材に講習が行われました。特筆すべきはこれら講習は宇都宮市文化会館との共済事業であることで、費用・会場面でおおいに助けられております。課題は参加人数で、今年の場合一二〇〜一八〇名という数でした。率にして五〇〜七〇%。これを一〇〇%にすることを目指しています。研修のみならず交流という側面も貴重であり、さらに魅力的な講習内容を模索しているところです。
 合宿講習会は、主に演出演技身体訓練を主旨とします。夏季休業中に二泊三日の日程で行われ、班別活動による芝居漬けの熱い時間を共有します。講師は日本工学院さんにお願いし、堀江辰男先生はじめ多数派遣していただいております。会場は那須高原にある研修施設で、ほぼ貸し切り状態に加えお風呂は二四時間可能な温泉付という快適な環境で行われます。参加人数は九〇〜一〇〇名。これもあと三〇名は増やしたいと考えています。
 技術講習は過去二〇回、合宿講習は同二一回を数えました。全国・関東に出場した生徒たちは例外なく講習会に参加しています。「講習会で育てられた」との言も耳にします。この二本柱を頑固に深化発展させることがとちぎの変わらない基本方針です。
《県大会は全員学習の場》
 とちぎの大会運営の基本理念です。
 そこではコンクールの勝ち負けだけにこだわらない会話を意図的に整えていきます。良き観客を育てるという課題から、生徒講評員制を導入し四回目となっています。福井・勝山南高の川村信治先生からは貴重な示唆をいただきました。

4 とちぎの課題、そして
 県内ブロック再編成とブロック大会自主運営が緊急の課題として浮上してきています。五年前に地区再編成を行い、九地区から五ブロックへと再編成しましたが、またしても参加校急減ブロックが生じ、四ないし三ブロックに再編成する必要が高まっています。折しも県立校再編事業が平成一七から始まり、演劇部のある高校でも統廃合が始まります。
 とちぎでは、ブロック大会こそ最も大切にすべき大会との認識が高まっています。これまでの反省から審査員も専門家や県外顧問を招聘するなど、いわゆる県大会並みの運営の労をブロック大会にも投入すべきと考えています。
 したがって全国大会の年度内開催をという強い主張には、むしろ抵抗感を覚えるのがとちぎの空気です。
 最後になりますが、文化・芸術に理解のある国民性の醸成に高校演劇の組織は寄与してるのではないかと思います。そして全国との連帯が冒頭に挙げたような逆風に立ち向かう活力を与えてくれるのだと信じています。とちぎの高校演劇をよろしくお願いいたします。
(栃木県高校文化連盟演劇部会事務局長局長)