| ■ 大会審査結果 | |||
| 第五十四回全国大会は、群馬県桐生市の桐生市民文化会館(シルクホール)で八月八日から八月十日にかけて開催されました。 七年ぶりの首都圏での開催と言うことで、観客動員数もかなりの数に上るのではないかと予測されたため、キャパの大きなこのホールでの開催となりました。実際、予想通りの盛況となったのですが、二階席も有効に使用されて、大会は順調に進行されました。 今年はブロックローテーションによる出場校増枠は東北ブロック。開催県代表校含めて、十二校が熱演の舞台を客席に届けてくれました。 審査員は、専門家審査員が、劇作家で京都造形芸術大学舞台芸術学科長の川村毅先生、朝日新聞論説委員で演劇評論専門の山口宏子先生、全国大会審査は青森大会以来二度目となる俳優のオオハシヨースケ先生、そして舞台芸術家で全国大会ではおなじみの石井強司先生。そして顧問審査員は、北海道ブロックから影山吉則先生、中部日本ブロックから北市邦男先生、中国ブロックから伊藤隆弘先生という、全国大会ベテランの先生方がそろわれました。 大会審査は上演ごとに審査員間で自由に討議をしていただき、一日終了後に全体的な感想を交わしていただき、最終的には、別紙掲載のように、審査会で優秀と思われる四校を推薦していただいて、選考に入りました。 まず、審査員全員から優秀として満票の支持を得た青森中央高校「河童」と、新島学園高校「りょうせいの話」、そしてわずか一票の差でそれに続いた三刀屋高校「暮れないマーチ」の三作品は、優秀校として推薦することが全員一致で決まりました。 「河童」については、固定された集団関係の中で続くのではなく、集団関係が継続する中で加害と被害が移り変わっていくいじめ問題の現代の特性が見事に描かれている事への評価、そしてそれが立場が一転して加害に転化した者の激しい言葉、さらに被害の立場に理解を示そうとした者に、河童が伝染してしまうと言う幕切れの衝撃的なシーンの描写、冒頭の群読と、終幕の群読のシーンで、そのいじめの伝染が椅子の数の変化で示されている演出などに高い評価がなされました。いじめの問題に矮小化しないで、人間の本質を突く視点が貫かれているとの声も聞かれました。 「りょうせいの話」については、自らの生活の場面でのリアルな設定と表現が何より効果的に描かれていて、登場する一人ひとりの描き方が生き生きとして現実的であることが作品への共感を呼ぶことに成功していることが評価されました。男子寮ならではの話題が繰り返されながら、それが少しも品性をおとしめることなく、むしろ最後まで一枚のチケットをめぐるかすかな恋の物語の仕掛けとなって描かれる丁寧な作り方、演技の上でもそれをさりげなく演じて、伏線を伏線として気づかせない細やかな演出などにも評価が集まりました。 「暮れないマーチ」については、幼い兄弟二人の生と死の心象風景が、登場人物の双子の姉妹に語りを進行させる手法や、照明、音響でどんどんそのイメージを展開させる表現力に高い評価が集まりました。冒頭のゆっくりとした動きで始まる美しいシーンには、審査員がそれぞれ様々な作品のイメージを語り合うほどでした。ただ、音楽のイメージが強く出過ぎて、その歌詞にイメージを預けてしまうことになっていたのではないかとの声も多く、その点の演出については異論や意見が出ました。 このような三作品の講評を討議の中で出していく中で、最優秀作品は、その視点と、演出・演技の優れた表現力に満場一致で「河童」とすることが決まりました。 優秀校の三校を推薦することで意見が分かれていた一校については、再度議論を重ねました。その結果、長野県岡谷南高校の「オイディプス」には映像を用いたり、ギリシア建築を模した舞台装置や、小道具へのこだわり、そして何より、ギリシア悲劇「オイディプス」に果敢に挑戦し、マスコミ批判などの視点を取り入れて自分たちなりの「オイディプス」像を表現しようとした姿勢に評価が集まり、優秀校として推薦することが決まりました。 創作脚本賞は、今年度の対象作品の中で、群を抜いて登場人物の描き方や、設定の情景描写の巧みさが光った、新島学園高校大嶋昭彦先生の「りょうせいの話」が全員一致の支持で決定されました。 また、舞台美術賞は、実際の寮生活の雰囲気を細かく丁寧に作り上げていた新島学園高校に贈ることが決まりました。 今年の大会は、まさしく猛暑の中での熱い大会となったのでしたが、その熱さを象徴するような舞台が相次ぎました。上演が朝早くから行われることが決まってからは、早朝に起きて身体をならしておくことを心がけた舞台、精神集中と身体訓練を素振りで鍛え上げた舞台など、話題を独占する舞台が相次いだことがそのことを示しています。その熱さに、詰めかけた観客の皆さんからはつきることのない拍手が送られていました。 そして、大会を滞りなく進めていただいた群馬県の高校生の皆さん、先生方、ホールスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。町の文化が今に息づいている桐生ならではの大会となりました。ありがとうございました。 (吉田) |
【最優秀賞(文部科学大臣賞・全国高等学校演劇協議会会長賞)】 ☆青森県立青森中央高等学校 畑澤聖悟作「河童」 【優秀賞(文化庁長官賞・全国高等学校演劇協議会会長賞)】 ☆島根県立三刀屋高等学校 亀尾佳宏作「暮れないマーチ」 ☆新島学園高等学校 大嶋昭彦作「りょうせいの話」 ☆長野県岡谷南高等学校 ギリシャ神話より 岡谷南高等学校演劇部脚色 「オイディプス」 【優良賞(全国高等学校演劇協議会会長賞)】 (上演順) ☆神奈川県立大船高等学校 土田峰人作 のまさとる潤色 「山 姥」 ☆東京都立東高等学校 前原麻希・三輪 忍作 「羊のお水 さようなら」 ☆北海道大麻高等学校 山崎公博作「カノン」 ☆藤ノ花女子高等学校 武田郁子+花ちゃんズ作 「幸せになぁれ」 ☆高知県立春野高等学校 太宰 治作「駈込み訴え」 ☆山形県立置賜農業高等学校 河原俊雄作「どんがら山奇譚」 ☆大分県立日田三隈高等学校 岩男衣世作 日田三隈 高等学校演劇部潤色「ボタン」 ☆和歌山県立向陽高等学校 阿部 順作「Leaving School 〜振り返るこ となく、胸をはって〜」 【創作脚本賞】 ☆「りょうせいの話」の作者 大嶋 昭彦 【舞台美術賞】 ☆新島学園高等学校 以上 |
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