都道府県だより
千葉県

千葉県高校演劇の
   
春夏秋冬2008

五木田幸彦

 千葉県高等学校演劇連盟は、戦後の荒廃と混沌に中にあった昭和二十三年に発足しました。そして、その年の十一月には第一回高校演劇コンクールも開催されました。参加校は四校でしたが、若き日の宇津井健氏が参加されていたそうです。歴史を感じます。そして昨年度、創設六十一年目を迎えることができました。

 現在の千葉県の加盟校数は一○八校で、十二の地区に分かれて活動しています。では、一年間の活動を、昨年度を例にご紹介致します。

【春季地区発表会】

 多くの三年生にとっては最後の舞台であり、また、新入生にとっては初舞台となる大会として、毎年六月中におこなっています。昨年度の上演校は七十九校。他の都道府県でも同じ悩みを抱えていると思いますが、近年の部員数の減少で上演が出来ない学校が増えています。上演校が二校という地区もありました。

【演劇研修会】

 演劇の専門家に生徒と顧問とが直接指導を受けることで演劇の面白さにふれ、日常の練習活動に活かしていくことを目標に、東金青年の家を会場にして、七月下旬に二泊三日で実施されます。昨年度は劇団青年座研究所の方々を講師としてお招きしました。歌手も実践している本格的呼吸法を学んだ後、ゲーム感覚でできる肉体と感情の解放の講習を受けました。最後に一枚の絵からイメージを膨らませて劇を作るエチュードをおこない、最終日には習作発表を実施しました。顧問二十四名、生徒一一八名が参加しました。

【全国高等学校演劇大会】

 昨年は八月八日〜十日まで群馬県桐生市で開催されました。群馬の先生方、お疲れ様でした。残念ながら、千葉県の出場はありませんでした。もう六年も全国から遠ざかっている千葉県ですが、今年は出ます。松戸馬橋高校の『赤鬼』、楽しみにしていて下さい!

【関東高校演劇サマーフェスティバル】

 関東演劇協議会主催で、八月中旬に足立区のシアター1010で開催される行事です。十五回目を迎えます。昨年は関東地区十一都県の代表八校が上演し、千葉県からは一昨年度の中央発表会三位の八千代松陰高校が出場しました。関東といっても都県によって様々なカラーがあるので、それを観られる良い機会となっています。

【顧問対象照明講習会】

 顧問の技術向上を目的に八月下旬におこなわれます。講師は千葉県教育会館スタッフの宮本氏に例年お願いしています。氏は自らも高校演劇の出身なので、実情をふまえた実践的な講習をしてくれます。ここで学んだことを秋の地区大会や県大会で活かす学校も多いです。十八名の顧問が参加しました。

【秋季地区発表会】

 総合文化祭の一環として中央発表会につながる大会です。十の普通地区から各一校、二つのシード地区(前年に県代表を出した)から各二校を中央発表会に選出します。八十八校が上演しました。

【高等学校演劇研究中央発表会】

 関東大会出場をかけて各地区代表十四校でおこなわれる県大会です。千葉県の最近の特徴として既成作品の上演が多いことが上げられます。皆が知っている作品をいかに自分たちなりに表現するか。演出の腕の見せ所です。在り来たりでは霞みます。完成度の高さが勝負です。ですが、各校ともその課題を見事にクリアしていると思います。また、大会の要が生徒実行委員会です。照明・音響・舞台・会場・広報など一四〇名もの、県大会に出場できなかった生徒が大会を支えています。ありがたいことですが、ここでの体験を通して「来年は私が舞台に」と思うのでしょう。

【関東高等学校演劇研究大会】

 関東大会は二会場でおこなわれており、昨年度は北会場が栃木県、南会場が千葉県で開催されました。関東大会の開催は部会にとっては一大事でしたが、無事、盛会の内に終了することができました。

【顧問研究協議会】

 顧問の演劇研究や部活動指導法を報告する場として、二月におこなわれます。昨年度は、関東大会で最優秀賞を受賞し全国大会出場を決めた松戸馬橋高校の土田峰人氏に芝居作りについて講演していただきました。

(千葉県高文連演劇専門部
 委員長

石川県

サポート体制の
  充実を目指して

竹 森  靖

《創立六十周年》

二〇〇八年度は、私たち石川県高文連演劇部の創立六十周年と中部大会の県内開催が重なり、多忙ながらも大変充実した一年であった。通常事業に加え、記念事業として、劇団週末くらぶ特別公演「弟の戦争」と劇団アンゲルスによる「道化師たち」の鑑賞および記念レセプションを行った。また、合同発表会の記念プログラムを作成し、この十年間の歩みと上演作品一覧を掲載した。

 劇団週末くらぶは、一九九一年に当時の生徒たちが、上演時間やキャストの制約にとらわれないで、より高い舞台表現を求めて、学校の枠を越えて自主的に集まって結成された。二〇〇五年まで十六回の公演を重ね、大きな成果を上げてきた。中心顧問の退職などにより中断していたが、現状を憂えた卒業生たちが熱心に動いてくれたおかげで復活した。キャスト・スタッフとも卒業生が中心で、現役生の参加は二名のみであったが、多くの生徒が観劇し刺激を受けた。

 石川の高校生は、自分たち以外の舞台を見る機会が少ない。そのため、演劇に対する視野が狭く、表現方法も画一的なきらいがある。多様な演劇に接する機会を設けることも、私たちの大切な活動の一つである。鑑賞教室を毎年実施してきたが、地元の劇団の作品を見ている生徒が意外に少ないことから、金沢を中心に活躍している劇団に公演をお願いした。アンゲルスには卒業生も多く参加しており、劇団週末くらぶと共に、今回の観劇によって、卒業生の活躍ぶりや、身近に演劇を楽しめる場が数多くあることを生徒は知ることができたのではないか。また、演劇表現の多様性・可能性を学んでくれたのではないかと思う。

《高文連演劇部の四季》

 通常の活動は大体次のようである。石川の高校演劇部員が最初に集まるのが、春季演劇講習会である。演劇の基礎を学ぶための一泊二日の講習を受ける生徒と、合同発表会の会場であるフォルテでの舞台美術・照明講習に参加する生徒とに分かれるが、宿泊組が講習終了後にホールに合流し、全体会および生徒実行委員会を行い、合同発表会に向けて意識を高める。

 夏の合同発表会は八月上旬に五日間行う。照明・音響技術講習を事前に行い、スタッフ面でのレベルアップを図っている。審査は専門家審査員一名および顧問審査員二名の合議によるが、生徒講評委員会の審査権も認めており、毎日上演終了後に意見交換を実施している。審査員講評は原則として上演終了後にホールで行っており、観客も見終わったばかりの劇について、審査員と上演校のやり取りを聞くことができる。生徒講評委員は自分たちが選んだ作品を審査員に示すと共に、独自に一校を生徒講評委員会賞として表彰する。ちなみに副賞として図書券を渡しており、上演校にとって「最高」の賞になっている。また、観客を一番多く集めた学校にもすてきな賞品を用意している。

 十一月には二泊三日のハードな秋季演劇講習会が待っている。今回は俳優・声優の石田太郎さんに演技の講習をお願いしたが、セリフの大切さを生徒一人一人が理解できるまで、徹底して指導していただいた。同時に行っている戯曲講座も好評で、書き上げた作品はデータで各校に配布され、活用されることになる。

 秋から冬にかけては各校の自主公演の季節であるが、二〇〇八年度は継続的な講習会の取り組みが試みられた。中部大会を間近に見て刺激を受けた意欲的な生徒が集まり、寒さを吹き飛ばす熱い講習が展開された。

《現状と課題》

 人生にたとえれば還暦を迎えた石川の高校演劇であるが、ここ数年はやや疲れ気味で、元気が薄れていた。どこの県でも問題になっているのであろうが、部員の減少が急速に進み、それに伴い廃部や顧問の減少など、マンパワー不足がいよいよ深刻になってきた。仲代達矢さんの無名塾との交流でよく知られている能登演劇堂がある能登地区では、演劇部がある学校はわずか三校である。南西部の加賀地区でも現在四校しか活動していない。そのため、二〇〇四年度から合同発表会のファーストステージ(地区大会に相当)を取りやめ、県大会のみとせざるを得なくなった。二〇〇八年度の合同発表会は二十一校が参加したが、最盛期の三分の二に満たない状態である。

 このような現状であるが、生徒の演劇にかける思いとエネルギーは昔と変わらない。二〇〇八年度の取り組みをベースに、石川の高校生たちがさらに成長してくれるよう、サポート体制を充実させていきたい。

     (石川県高文連演劇部
前専門理事長)

大阪府

 "アラカン"大阪高校演劇

藤本 雅也

☆大阪府大会について

 大阪府高校演劇研究大会(コンクール)は今年で59回、来年で「還暦」を迎えます。毎年、10地区に分かれて大会を行い、府大会では各地区代表13校による上演が行われています。「あれっ、数が合わない?」って思われましたか? 大阪では1996年、それまでの12地区から現在の10地区に再編した時に、シード制を導入しました。「ある地区から大阪府大会に出場した高校が、さらに最優秀校として近畿大会に出場した場合、その地区から翌年は2校が府大会に出場できる」というものです。シード制と言っても、学校単位ではなく地区へのシード権というのがミソで、実力がありながらも地区では二番手に甘んじていた学校にも府大会出場、近畿大会出場のチャンスが生まれることになりました。

大阪の大会で特徴的なのが創作作品の多さでしょうか。昨年は地区大会参加72校中55校が創作、その8割近くが生徒創作によるものです。中には府大会での専門家審査員から「とても高校生が書いたとは思えない」と高い評価を受ける作品もあります。

もう一つ、府大会で特徴的だと思えるのが、照明の調光卓操作を出場校の生徒自身で行っている、ということです。もちろん会場のホールには打ち込みの設備も整っており、親切なスタッフさんもおられるのですが、大阪では伝統的に生徒が操作することになっています。たった一人で悪戦苦闘している様子を見かねてスタッフさんが手伝ってくれる場合もありますが、生徒たちは緊張しながらもフェーダー操作に集中しています。

府大会では生徒実行委員を募集し、毎年150人近い生徒が参加してくれています。舞台関係では進行・装置・音響・照明、会場関係では放送計時・総務・上演劇研究・速報、計8つの係に分かれて大会の運営にあたっています。彼らなくして大阪の大会は成り立ちません。

☆審査員体制の変更

地区大会では他地区の3人の顧問による審査を長らく続けていました。しかしながら、数年前から顧問審査員と生徒との年齢のギャップによる感覚のズレが懸念されるようになりました。顧問の高齢化と若手教員が全体的に少なくなっていたのがその原因です。また、顧問審査員のなり手が少なくなってきていたこともあり、審査員のうちの1人を、演劇部出身で現在も演劇活動をしている卒業生に依頼するという案を試行してみたところ、評判も上々であったので2006年より正式に審査員は顧問2名、卒業生1名という体制となりました。

☆悩める"アラカン"

 昨年の加盟校数は102校、かろうじて100を超えていますが、コンクール参加数は72校。10年前に比べれば30校ほど少なくなっています。原因は、生徒数の減少とそれに伴う統廃合、さらにこの不況でクラブよりもアルバイトに向かう生徒たち……おそらく日本各地で同じような光景が見られるのでしょうが……。

 そしてさらに追い討ちをかけてくるのが大阪府の財政難による緊縮財政。例えば、公立・私立共に予算面で様々な影響を受けるのはもちろん、演劇だけでなく文化クラブの活動の場の一つであった府立のホールが閉鎖になるなど、あたかも「大阪に文化は必要ない」とでもいうような府の方針に戸惑いと不安を隠せないのは確かです。

 また、前述したように顧問の高齢化も大きな問題になりつつあります。これまで大阪の高校演劇を引っ張ってきた顧問の多くが10年後にはほとんどがいなくなってしまいます。次の世代にも実力のある顧問はいますが、なにせ絶対数が足りません。もしかしたら審査員のように、卒業生の力を借りないといけないことがもっと出てくるかも知れません。

 そして現在一番の問題が、地区大会を開催するためのホールが足りない、ということです。中心に位置する大阪市や堺市内には会場として適切なホールが全くと言っていいほどありません。高校のホールにも限界があり、現在の10地区制をこれからも維持できるかどうかの瀬戸際にあると言えます。

☆それでも元気な"アラカン"大阪

 様々な問題はあれど、そんな大阪の高校演劇の元気の源はやはり、生徒たちのパワーです。外部より講師を迎えて行う春・夏恒例の演劇講習会には毎年300〜400名の生徒が参加しています。各地区でも講習会が行われ、部員相互の交流の場となっています。7月から8月にかけては高校演劇連盟が後援しているHPF(High school Play Festival)が、参加校と実行委員の生徒たちの自主運営で行われています。冬にはやはり高校演劇連盟後援の、北摂高校演劇フェスティバルが開催されています。状況が厳しくても演劇に向ける生徒たちの情熱は熱く?アラウンド・還暦?の大阪高校演劇からは今年も素晴らしい作品が生まれてくることでしょう。       

 (大阪府高等学校演劇連盟
事務局長)

広島県

 二〇一六年に向けて

中村 忠夫

 二〇一六──この四桁の数字を今、広島県の顧問たちは自分の暗証番号と同じくらい、強く心に刻みつけていることでしょう。

 この年、広島県で全国大会が開かれます。大会事務局長も実は既に内定しています。今、県内ではそれに向けて気運を高めていこうとしています。

 その一つとして、生徒講評委員会を県大会で始めました。全国大会で定着しているこの活動、県内ではまだまだ知られていないのが実態です。しかし二〇一六年を考えるとそろそろ、ということで始めました。全国大会とは規模が違うので、講評委員の募集等、難しい面もありましたが、大会終了時にはコンパクトながら講評文作成まででき、初年度としてはまずまず、との担当顧問の言でした。

 また、県全体を対象とした演劇講習会を初実施しました。他県の方々からすれば、それがどうした、と思われるかもしれませんが、これまで広島県では県内各地区(広島・呉・尾三・福山・三次)での講習会は行われていたものの、地区を越えての活動というのは県大会以外なかったのです。内容は舞台美術の実作を通した講習でした。生徒・顧問合わせて約七十名(集めれば集まるものですね)で十二月の二日間、時間も忘れて楽しく作りました。

 劇作とはそもそも皆で寄ってたかって行うものですが、先に書いた「気運を高める」とは、この「寄ってたかって」のムードをより高めることが肝要と思っています。生徒講評委員会や県全体での講習会もその一つになるでしょうし、今後は地区を越えた合同合宿などもできたらいいな、と個人的には思っています。

 もちろん、これまで行ってきた「寄ってたかって」の活動も健在です。県内各地区では毎年三月下旬に合同公演を行っています。特に最も早く始めた広島地区はもうすぐ三十回を迎えようとしています。この合同公演が各地区のレベルアップと、結束の深化につながっています。

 ところで、広島県では県事務局はほぼ一年交代で回しています。他県からすると驚かれるかもしれません。県大会は県事務局を持つ地区で行いますが、それを様々な場所にすることで(小旅行気分にもなれますし)、その地区の活性化につながるという効果があります。ホールによって設備や条件(減免など)、周辺の状況なども違うため、時として困難な面もありますが、色々な場所でできるというのは、やはり楽しいものです。

 見方を変えれば、それだけ県事務局を持てる人材が県内に幅広くいる……と言って、胸を張りたかったのですが、昨今、高齢化社会ですよね。私、ただ今教員生活十年の三十四歳ですが、県内の顧問の中では未だに最年少の部類です。だから二〇一六年も、実は少々不安があります。今中心になっている人が、これから一人二人と、現職から去っていきます。県事務局も、今後は二年サイクルくらいにしていかないといけないかもしれません。

 そのような状況だからこそ、なおのこと「寄ってたかって」が大事なのでしょう。人数の多寡に関わらず、その雰囲気と場があれば、盛り上がっていくことと思います。そしてそれを作っていくことこそが、事務局の大事な仕事なのではないか──県事務局の短い任期を終える今になって気づきました。まだまだものの分かっていない私です。

 ……と、いうようなことを言うと、県内では「じゃあ、またやれば?」と言われそうです。それが冗談や軽口ではなく、本当になりかねないのが、広島県の特徴でもあります。ただ、それを言った人がきちんと支えてくれるのも、また広島県の特徴です。

 結局、集まるのですね。ただ、これからは人が減っていくのもあり、「集まる」ことに頼るだけでなく「集める」努力もより必要になってきます。最終的には二〇一六年の観客を──。

 そういえば、その年はオリンピックもありますね。開催地はまだ決まっていませんが、東京になると、観客(一般客)をそちらに取られてしまうのでは、と少々不安でもあります。

 ……と、いうようなことを言うと、またまた県内では「じゃあ、オリンピックよりも魅力的な大会にすれば?」という声が出てきそうです。それを冗談や軽口ではなく、本当のことにできたら最高ですね。とにかく、今後七年をかけて、気運と態勢を高めていきたいと思います。

 どうぞ皆様、二〇一六年は寄ってたかって広島県へ!

(広島県高等学校演劇協議会
事務局長)

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