第56回 宮崎大会によせて 〜ご挨拶も兼ねて〜 

宮 田  茂

 まずは、この場を借りてご挨拶申し上げます。私は、永嶋達夫前会長のご勇退に伴って、今年度より全国高等学校演劇協議会の会長になりました。永嶋先生は十二年という長きにわたり、本協議会の充実・発展のためにご尽力くださいました。心より感謝申し上げます。

 実は、私も全国の事務局で永嶋先生とご一緒させていただきましたので、ご活躍なさっている姿を直接目にしております。後任に抜擢されたことを誇りに思い、微力ながら本協議会の発展のために尽力するつもりですので、皆様のご支援・ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

 私事であるが、高校演劇に係るようになってから三十数年になろうとしている。始まりは、担任したクラスの文化祭の出し物でミュージカルを上演したことであった。その翌年に演劇部の生徒に顧問を頼まれ、全くの素人であることも顧みずにコンクールに出場することになったのである。

以来、演劇部の生徒とともに辛酸をなめつつ、日々研鑽を積み?今日に至っている。「活動報告集」の中に紹介されるように、各地区で開かれる指導者講習会や研修会に参加した。地区大会から始まるコンクールで多くの芝居を観させていただいた。また、全国の事務局では、夏の国立劇場で開催される優秀校公演に携わることができた。その際の観劇や審査員の講評が実に勉強になった。残念ながら、全国大会に出場することはかなわなかったが、このように高校演劇に様々な形で係ることができたので、生徒が自分たちの世界を創造する手助けは十分にできたように思う。また、毎年のように一人の観客としても、一期一会の感動を味わわせてもらった。それらの恩返しが少しでもできればという思いで、本協議会の会長をお引き受けした次第である。

 第五十六回全国高等学校演劇協議会全国大会は、第三十四回全国高等学校総合文化祭の主催県である宮崎県において、ここ宮崎県立芸術劇場を会場に八月三・四・五日の三日間にわたって開催される。出場する各ブロックから推薦された十二校については、すでに「演劇創造」(復刊一一八号)でお知らせしたところである。

 昨年度は、新型インフルエンザの流行で、地区大会の開催等で苦労された。また、従来どおり開催される予定であった春季全国高等学校演劇研究大会が急遽、岡山県倉敷市で開催されることになった等、様々な困難な状況に遭遇した。  

 本年度に入ってからも、宮崎県では口蹄疫が猛威を振るい、総合文化祭の開催に向けてのご苦労は一通りのものではなかった。六月三十日付で全国高等学校文化連盟会長より、文化庁・宮崎県実行委員会・全国高文連の三者で大会開催の可否について協議した結果、現時点での開催が可能であるとの判断が出された旨の連絡があった。まだまだ予断を許さない状況ではあるが、ひとまず胸をなでおろしているところである。

 これら様々な課題を乗り越えて開催される全国大会である。例年にも増して、高校生の文化あふれる創造的な、躍動感のある、斬新な公演になることが期待される。

 最後に、この全国大会が指導者講習会の性格も有していることにも触れておきたい。永嶋前会長も述べているように、高校演劇の抱える課題に指導者の養成がある。今大会には「第五十六回全国高等学校演劇指導者講習会」という名称も冠せられている。ベテランの顧問の先生も、最初は素人である。 

 指導者講習会では演劇のプロが講師となって演出・演技・舞台美術・劇作等についてご指導くださる。演劇の魅力を直接肌で感じながら芝居作りについて勉強し、同好の士である顧問の皆さんの交流が深まることも期待する。

(全国高等学校演劇協議会会長)

(東京都立千歳丘高等学校長)


「演劇のふるさと」宮崎へようこそ

黒木 正彦

とき放て創造の力
 熱き太陽の光と共に

第34回全国高校総合文化祭
第56回全国高等学校演劇大会


 ようこそ、太陽と緑の国、神話のふるさと宮崎にお越しいただきました。

 今回の口蹄疫のことでは、全国の皆様に大変なご心配をおかけしましたが、ようやく終息し、全国から多くの高校生をここ宮崎にお迎えして、第三十四回全国高等学校総合文化祭を盛大に開催できますことを心からうれしく思いますととともに、演劇部門に出場される全国の代表十二校の皆様、そして鑑賞にお越しの皆様に開催県を代表しまして心より歓迎とお礼を申し上げます。

 ここ宮崎は、「国産み」など、古事記や日本書紀に記されている日向神話をはじめ、ロマンに満ちた伝説や史跡の宝庫であり、これらの神話や伝説とともに祭りや神楽が生まれ、地域の伝統文化となっています。神話や伝説はどれ一つとっても魅力に満ちた物語であり、例えば「アマテラスの岩戸隠れ」の神楽は、しめ縄に囲まれた舞台で演じられる壮大な演劇を観る思いがします。そのような意味では、宮崎は日本の「演劇のふるさと」とも言えるかもしれません。

 さて、演劇活動をしている全国の高校生にとって、この大会が特別な意味を持っていることは、少しでも高校演劇に関わったことのある人なら、よく承知されていることだと思います。一つの大会を開催するために多くの経費と時間を必要とするジャンルの特殊性の為に、上位大会の枠は他のジャンルに較べて極端に少なくなります。一段ずつ階段を上るように選抜されていき、気の遠くなるようなステップを踏んだ末に、年度を越してたどり着くのがこの大会です。九州や北海道などの各ブロックからわずか一校しか出場できないという現実が、その厳しさを雄弁に語っています。しかも、挑戦の機会は年に一度しか与えられません。全国大会に出場することの栄光と責任は、たんに一つの上位大会というには、あまりにも大きなものがあります。

 実は今回、その栄誉ある出場校に開催県枠と九州代表枠の二つを頂くことができました。過去に二回しか全国大会に出場したことのない宮崎県の高校演劇界にとって、空前にして絶後の快挙であると受け止めています。日本の「演劇のふるさと」とはいいながら、宮崎県は二十校そこそこの活動です。その小さな専門部の中から二校が栄えある全国の大舞台に出場できるのです。派手さはなくてもいい。等身大で背伸びをせず、さわやかな感動をお伝えすることが出来たらと考えています。

 昨年度の三重大会においては、全国から集まった高校生の素晴らしい舞台と地元高校生のきめ細かで行き届いた大会運営に感動いたしましたが、ここ宮崎の地においても、「とき放て創造の力、熱き太陽の光と共に」の大会スローガンのもと、演じる人と観る人、大会を運営するスタッフが一体となって、真夏の熱き太陽の光と共に、高校生の創造の力、若きエネルギーが解き放たれることを願ってやみません。運営する教員も生徒もたくさんいるわけではありませんが、宮崎の夏の太陽に負けないくらいの熱い思いで、歓迎させていただきたいと考えています。それが、今回の口蹄疫問題で、全国の方々から受けた暖かいご支援と励ましにお応えすることだと思います。

 結びに、本大会開催にあたり、多大なるご支援、ご協力を賜りました関係機関、関係各位に深く感謝を申し上げ、お礼と歓迎のご挨拶とさせていただきます。

(第34回全国高等学校総合文化祭 

演劇専門部会長)

(宮崎県立大宮高等学校校長)

 

宮崎は元気です。

長尾 直紀

 宮崎県は6月30日に、開催決定を発表したが、例年だと、「全国大会開催」という言葉は、開催県にとって、いわば当たり前の言葉。開催直前の県なら、もう敢えて口に出して言う言葉ではない段階になっている・・・はずである。ところが、宮崎県では4月下旬に発生した口蹄疫禍のため、全国総文の開催自体が危機に陥っていた。どの関係者も対応策に頭を悩ませ、堂々巡りの話し合いが続く一方で、全国総文の準備も続けなければならない状態だった。ニュースや新聞に敏感になり、行き場のない思いで、準備に気を紛らせる日々が続いた。7月5日を最後に、口蹄疫発症の報道が止まった。その日から今日まで、開催実現の本日まで、とにかく祈った。心の中で必死に願った。真剣に祈った。「どうか、また出ませんように。」と。何の信心もない私は、子供っぽいのだが、とりあえず天に祈っていた。祈ろうが祈るまいが、結果は変わらなかったと思うが。

 出場校の中には、口蹄疫禍の影響で出場を辞退せざるを得ない高校がある。知っての通り、演劇部門は1校の重さがどの部門よりも重い。九州全体から1校というように、各ブロック代表になれるのは1校だけ。また次の全国大会で仕切り直すということが、非常に困難な部門である。そのチャンスを辞退せざるを得ない顧問や生徒の気持ちは、どんなに悲痛なものか。世の中には、どうにもならないことというものがあるが、気の毒でならない。せめて、残りの出場校のために全力を尽くしたい。また、全国から観劇の申込みをしてくださった方々のために、全国大会宮崎大会を観に来てよかったと思っていただけるように頑張りたい。そして、つらい思いをされている宮崎県の関係者の方々に、宮崎県の高校生たちが元気に頑張っている姿を見てもらい、少しでも顔を上げられる活力を分けて差し上げられればと願っている。

 全国大会の舞台は、高校演劇の頂点を目指す舞台である。しかし、ただ日本一を獲得することだけが目的ではない。各都道府県大会、各ブロック大会と上がってこられれば、それだけたくさんの人に自分たちの劇が観てもらえるのである。それはどんなにうれしいことか。演劇は人に観てもらって喜びを感じられるものである。高校演劇の独特の雰囲気、ひたむきな表現、手垢の付いた言葉だが、敢えて言うなら、まさに「青春の舞台」である。

 プロの劇団に比べれば、準備不足なところや稚拙な表現もあるだろう。しかし、それこそが高校演劇の魅力でもある。必ず心を打たれるものがある。過去にもそういう舞台がたくさんあった。だからこそ、全国各地で開催される全国大会の舞台を楽しみにして、こんな日本の端っこの県にまで、わざわざ足を運んでくるのである。今大会でも、必ず感動を与えてくれる舞台があると信じている。

 本来、宮崎県は海や山や空が美しい、風光明媚な典型的な田舎である。人間性ものんびり穏やかで、のんびりし過ぎているくらいの県民性である。その宮崎で全国大会を開催できることを何年も前から楽しみにしていた。来県される方々には、演劇も観光もとことん楽しんでいっていただきたい。

(宮崎県高文連演劇専門部 

専門委員長)

 

全国大会審査員 (分科会講師)
土 屋 茂 昭 氏 (第1分科会:舞台美術)

永 山 智 行 氏 (第2分科会:劇作・演技)

岡 安 信 治 氏 (第2分科会:劇作・演技)

西 堂 行 人 氏 (第3分科会:劇   評)

堀 田 良 夫 氏 (第4分科会:部 活 動)

杉 内 浩 幸 氏 (第4分科会:部 活 動)

二 司 元 能 氏 (第4分科会:部 活 動)

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