大会審査結果
 第56回全国高等学校演劇大会は、宮崎県宮崎市のメディキット県民文化センターを会場に、8月3日から8月5日にかけて開催されました。

 4月の理事会、出場校上演順抽選のときは誰も予測しなかった、口蹄疫問題。6月の時点では、実際に開催もどうなるかというところまで行き、その判断を示すとされた宮崎総文祭ホームページのアクセスは、一気に1万を超すほどになりました。

 そのような状況にも関わらず、粛々と鋭意準備を進めてこられた宮崎県の先生方、生徒の皆さんのおかげで、予定通りの開催となりました。

 しかし、残念なことに、宮崎県と同様に畜産業を主産業とする北海道十勝地区は、終息宣言の出ない中での開催では、参加はできないと判断され、北海道ブロック代表校の北海道鹿追高等学校が、上演できないことになりました。この事態に対して、全国高演協常任理事会と全国事務局は、七月初めに臨時の会議を開いて、

・鹿追高校が北海道ブロック代表校であることに変わりはないこと

・出場推薦された作品の上演舞台のビデオを宮崎大会で上映する

・ビデオ上映と、実際の上演作品を同等には審査できないこと

以上を決定し、審査員の先生方が最初に集まられたときに、経緯と決定の趣旨を説明するという異例の措置をとりました。審査員の先生方には不測の事態の深刻さをご理解いただきました。また、鹿追高校には、急きょ全国大会の上映のために新たにホールを借りて公演をしていただき、それをビデオ収録すると言うことにご協力をいただきました。

 今大会審査員の先生方は、劇作家・演出家の岡安伸治先生、演劇評論家の西堂行人先生、劇団こふく劇場を主宰されている永山智行先生、舞台美術家の土屋茂昭先生、そして各ブロック推薦の顧問審査員として、杉内浩幸先生、堀田良夫先生、二司元能先生の七名の先生方でした。

 審査は、今大会も上演終了ごとに審査員控室で自由な意見交換を行い、2日目終了後の予備審査会、そして全上演終了後の審査会を経て、投票による優秀校4校を推薦していただくという、例年通りの手順で進められました。その結果は、別掲の表の通りです。毎年度、この審査経過報告で述べていますが、全国大会の審査は決して多数決ではありません。表も、それぞれの審査員の優秀候補であり、その集約結果をふまえて、ふたたび審査会は優秀校4校の選考に入ります。特に、今大会審査では、4校推薦の各審査員の重み、順位などについて話し合われました。そして、満票、および6票の推薦を得た3校に加え、3票、4票の推薦を得た5校を対象に議論を深め、選考を進めていくことになりました。

 四日市高校「Father’s day」は、身近な話題を描いており、先生の扱い方に問題を感じるが、中味を感じることのできる作品であるとの評価が示されました。一方、弘前中央高校「あゆみ」は優れた戯曲によるところが多いが、客席を感動させ、舞台の完成度の高さを考えれば、優秀であるとして、弘前中央高校が優秀校に選ばれました。

 続いて、最優秀校の選考に入りました。

 三刀屋高校「オニんぎょ」は戯曲の視点、発想、構成の面白さを評価する声が多数ありましたが、その戯曲のめざすものを表現するところまで至っていないのが残念であるとの意見が出されました。そして、議論は川之江高校「さよなら小宮くん」と前橋南高校「黒塚Sep.」に絞られていきました。

 川之江高校は、ウエルメイドな作品を達者に表現し、個性豊かな舞台を作り上げていた。客席の反応もよかった。しかし、前橋南高校の舞台は、ねらっている志の高さを評価したいとの声があり、主人公の感情表現、表情の豊かさなど、作品の理解の度合いが深く感じられ、総合的な評価で優れているとの評価が続き、前橋南高校が最優秀校に選ばれました。

 創作脚本賞の選考では、四日市高校、前橋南高校、三刀屋高校の三作品が対象に推薦されましたが、三刀屋高校の亀尾佳宏先生の「オニんぎょ」は戯曲として抜きん出た完成度を持つ作品であると高く評価され、決定いたしました。

 しかし、今大会は、省略舞台が多く、演出面でも、照明や音響、美術の面で意欲的な創意工夫が感じられる作品が少なかったとの意見が多く、舞台美術賞については残念ながら、該当無しと言うことになりました。この点は、来年度への取り組みの課題として残されることになりました。

 なお、冒頭にも記しましたが、今大会に残念ながら、舞台での上演を実現できなかった、北海道鹿追高校には、全国高等学校演劇協議会から特別参加賞を授与することになりました。

 昨年度は新型インフルエンザ、そして今年度は口蹄疫と、予測できないこととはいえ、せっかく心を込めて作り上げた作品が上演できないということは、本当に悔やんでも悔やみきれないものです。このようなことが二度と私たちの前には訪れないでほしいと思わざるを得ませんでした。

 しかし、会場のメディキット県民文化センターでは、ほぼ満席となるほどの沢山の観客の皆さんが、鹿追高校のビデオ上演も含め、全12校の熱い舞台に鳴りやまぬ拍手を送ってくださいました。やはりこうした交流が生まれたことが、何よりではなかったでしょうか。上演校の皆さん、審査員の先生方、大会関係者の皆さん、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。







【最優秀賞(文部科学大臣賞・全国高等学校演劇協議会会長賞)】

☆群馬県立前橋南高等学校

 同校演劇部+原澤毅一 作

 「黒塚Sept.」

【優秀賞(文化庁長官賞・全国高等学校演劇協議会会長賞)】(上演順)

☆島根県立三刀屋高等学校

 亀尾佳宏 作「オニんぎょ」

☆愛媛県立川之江高等学校

 越智 優 作「さよなら小宮くん」

☆青森県立弘前中央高等学校

 柴 幸男 作、畑澤聖悟 潤色

 「あゆみ」

【優良賞(全国高等学校演劇協議会会長賞)】 (上演順)

☆宮崎県立妻高等学校

 上田美和 作

 「トシドンの放課後」

☆山梨県立甲府昭和高等学校

 中村 勉 作

 「放課後の旅その他の旅」

☆兵庫県立神戸高等学校

 チェーホフ『三人姉妹』より、

 福田成樹 翻案「SISTERS」

☆三重県立四日市高等学校

 小林晋作 作

 「Father’s day」

☆村田女子高等学校 同校演劇部 作「とぅらとぅらとぅらとぅらとぅらとぅららー♪」

☆宮崎県立佐土原高等学校

 段正一郎 作、長尾直紀 潤色

 「銀の雨」

☆中央大学附属高等学校

 臼井 遊 作 「(急遽演目を変更いたしました)」

【創作脚本賞】

☆「オニんぎょ」の作者

 亀尾佳宏

【舞台美術賞】

 該当校なし

【特別参加賞】

☆北海道鹿追高等学校

 井出英次 作「平成二十一年度北海道然別高等学校演劇部十勝支部演劇発表大会参加作品」

以上

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