| ■ 都道府県だより | |||
埼玉の高校演劇 塩野 眞一 埼玉県の中央発表会は、彩の国さいたま芸術劇場で、毎年十一月に開催される。黒を基調とした、七六六席の理想的な空間。蜷川幸雄のシェイクスピア・シリーズの舞台である。このような舞台で、高校生が演じることができる。埼玉の高校生は、何と幸せなことであろう。うらやましい限りである。 特筆すべきは、スタッフの協力。中央発表会に向けての二回の打ち合わせでは、丁寧に、時には、厳しく、アドバイスをしてくれる。この打ち合わせを通して、生徒達は成長していく。もちろん、顧問も。リハーサルも成長の場だ。 中央発表会はコンクールでもあるから、賞を出すが、その他に、劇場スタッフが出場校のスタッフワークに対して、独自に賞を出してくれる。楽屋で行う最後の舞台監督会議で、舞台進行、照明、音響の各スタッフから賞が贈られる。副賞もある。スタッフ手作りの便利グッズだったり、顧問も欲しくなるちょっと珍しい備品だったり。役者だけでなく、裏方で頑張っている生徒達に光が当たる瞬間だ。 ただ、劇場スタッフの熱意に教員側が対応できないときがある。当然、スタッフはプロとして運営にあたる。スタッフからすれば、運営にあたる顧問はリハーサルから本番まで通しでいるべきだと思う。もちろんその通りだ。ただ、現実には、そう簡単に出張できるわけではない。事務局などの数人は通しで来ているが、他はそうはいかない。知識の少ない顧問も少なからずいる。これも我々から見れば、仕方ないことなのだが、そこに、劇場スタッフと顧問との微妙な意識の壁ができる。この壁をどう取り除くか、あるいは、低くしていくか、課題だ。 「連盟通信」という機関誌がある。以前は、年二回の発行であったが、連盟財政逼迫の中で、休刊。やっと最近、中央発表会の後に、「メール版」を、年度末に「印刷版」を発行できるようになった。そこにも、劇場スタッフの詳しいアドバイスが載る。実際の上演を元に、貴重なアドバイスをいただける。もちろん、審査員の詳しい講評も載る。大変参考になる資料である。 連盟の活動については、「活動報告集」に詳しく記載しているが、活動の根幹は、地区である。地区は十一(規約上は十三地区なのだが)。四、五月の春季演劇祭、九、十月の地区発表会。この二つが連盟最大の行事だ。ここしばらく、地区発表会参加校は、九十数校で推移している。加盟校は百を超えているので、参加できない学校もある。部員不足は大きな悩みだ。 地区発表会は、五ブロック制をとっている。中央発表会への選出方法については、長い議論を経て、現在の形に落ち着いた。十一地区を五ブロックにわけ、各ブロックから二校、中央発表会に推薦する。中央発表会は十校の上演。県全体の規模からすると、中央発表会参加校が十校というのは少ないかもしれない。以前は、十二校であった。予算、人的な制約で、十校あたり一校の代表というのが適正規模であると考えている。十校上演だと、遅い時間の上演がなく、最後の上演でも、観客が減らないというのもよい。 ブロック制のため、代表校のない地区もある。代表校がないと地区活動の沈滞を招くとの考え方もあるが、中央発表会のレベルの維持や、一つの地区から二校目が選ばれる可能性を残すという意味でブロック制を採用している。 「顧問研究会」という組織がある。正式には、「埼玉県高等学校演劇研究会」。連盟とは別組織で、主に、顧問の研修を担っている。近年は、生徒も巻き込み、充実した活動を行っている。 連盟総会の午後、素材上演を元に、演出家の直しを体験。今年は鴻上尚史氏に来ていただいた。 夏の研究会、「芝居を創ろう!ミニミニ芝居体験」。会場は県民活動総合センター。県内で、創作芝居を指導している顧問三人を中心に三チームに分かれ作劇。手法は三人三様。小ホールを使い、体を使って実際に動いて稽古。気づいたことをまた芝居に還元。他のチームはどうやってどんな芝居を創ったのか? 発表を相互に観て仕上げ。(「研究会通信」から抜粋) 冬の研究会、「プロに学ぶ〜ワクワクスタッフ体験」。会場は彩の国さいたま芸術劇場小ホール。顧問によるキャスト、スタッフ。年明け早々稽古開始、劇場スタッフとのヒアリング。集まると時を忘れて稽古に、打合せに、没頭。当日の流れは、まず、教員バージョン(教員プラン&オペ)上演、劇場スタッフによるダメだし。次に、劇場スタッフによる完全プロバージョン上演。生徒は観劇。 (「研究会通信」から抜粋) (埼高演連事務局長) |
三重の高校演劇の近況 赤塚 和也 突然ですが、皆さまにお聞きします。三重県は中部地方でしょうか。それとも近畿地方でしょうか。三重県高等学校演劇連盟には二つの側面があります。一つは中部日本高等学校演劇連盟の三重県支部という面、もう一つは高等学校文化連盟の近畿ブロック所属という面です。そのため、昨年度は中部大会の開催県という大役をつとめ、ホッと一息つく間もなく、来年には近畿高総文祭の開催県という大役が回ってきます。三年前には全国大会の開催県という大役もつとめていたということで、慌ただしい日々を送っています。 三重県の演劇部の先生はてんてこ舞いをしていますが、生徒諸君はレベルの高い高校演劇の上演を観劇する機会に恵まれることになりました。ここ数年、三重県の劇場でプロの劇団の公演やワークショップのイベント等が開催される機会も増えてきたこととの相乗効果で、演劇の世界にどっぷりはまる高校生の数も増えてきている感じを受けます。卒業後に気の合った仲間たちで劇団を結成して、自主公演を行ったりしているケースも珍しくありません。 このように活発なクラブ活動が行われている学校もあるのですが、その反面、部員数の不足によりクラブの存続が危うくなっている学校も増えてきています。三重県に限ったことではないと思いますが、要因として二つのキーワードが思い浮かびます。 一つ目は「多忙化」ということ。これは先生にも生徒にも当てはまります。例えば、7限目授業の実施などにより放課後のクラブ活動の時間が十分にもてなかったり、顧問の先生はクラブを見に行く時間がとれなかったりという事態が起こっています。 二つ目は「人間関係」の難しさ。リーダーシップをとれる生徒がいなかったり、部員どうしの人間関係がうまく行かなかったりなどで部活動の運営が難しくなっている学校も増えてきています。大会の上演本番当日にたどり着くまでに、部内では上演作品を上回るドラマチックな日々が展開されていたということもよくあります。 さて、昨年の十二月には三重県総合文化センターで中部ブロック大会を無事に開催することができました。この会場は、地元の人から「県文」の愛称で親しまれていて、県下でも屈指の施設と設備を誇っています。中部大会の各上演が終わった後のお客さんは本当にいい表情でロビーに出てきて、中には目頭を押さえている方の姿も見ることができました。大会が終わって、各上演校のホームページやブログを見に行くと「楽しかった」「悔いのない上演ができた」「大変お世話になり感謝している」という声をいただいていて感激しています。ホストの側として、これ以上の成果はありません。上演校の皆さん、観客の皆さま、本当にありがとうございました。 県文での中部大会のリハーサル大会と位置づけて、昨年の八月には七年ぶりにこの会場で県大会をおこないました。三重県では、北勢地区、中勢地区、南勢・伊賀地区という3つのブロックに分かれて地区大会を行い、各ブロックの代表十校による県大会を行っています。今年の大会スローガンは「よく見たらみんな笑っていた泣いていた。」というコミカルとも思えるものでしたが、各出場校が素晴らしい熱演を繰り広げて、閉会式では「よく見なくても」泣いている人があちらこちらにという感動的なものでした。大会が終了した後に聞こえてきたのが「県文での県大会はいい」という声。 本来ならば、毎年でも県文で県大会を開催したいのですが、ネックとなってくるのが会場と設備の使用料の高さで、他の会場でやるよりも三十万円くらいの費用が余分にかかってしまいます。事務局の仕事を引き受けて2年になりますが、この件に限らず、会場を押さえることの難しさを痛感します。アクセス、予約のしやすさ、使用料の三拍子が好条件に揃うということはなく、1つの大会を運営するごとに、何らかの大きな悩みや心配が発生する感じです。 事務局という仕事は、他から見るとどんな仕事をしているか見えにくいのに仕事の量は尋常でないというポジションですが、そんな中で、上演が無事に終わった後の上演校の晴れ晴れとした姿を見ることで、それまでの苦労は報われます。何事につけ、一つのことをやり遂げることは「自信」につながり、自分の人生にプラスになっていくんだなということを実感する日々です。 (三重県高等学校演劇連盟 事務局長) |
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おかやまの高校演劇 安藤 博巳 【はじめに】 私と高校演劇との出会いは、平成元年の全国高等学校総合文化祭岡山大会にさかのぼります。当時私は、高校一年生。高校に入学したら演劇部に入ろうと決めていたので、念願かなって四月に演劇部に入部したばかり。顧問は現在岡山県高等学校演劇協議会の理事長である柴田利明先生でした。その時の柴田先生も赴任したばかりで、まだ初々しかったのだなと、今になって思い出しています。それはさておき、演劇をかじりかけの私は、岡山で全国大会が見られるのだという喜びを胸に、倉敷市民会館に通ったものでした。 あれから早いもので、二〇数年が経ち、私も当時の柴田先生の年齢をとっくに超えてしまい、その恩師とともに岡山県高等学校演劇協議会の仕事をするようになって一年が経過したところです。地区大会や県大会などでは、大先輩方の後ろにくっついて裏方の仕事をしてきたので、県の事務局などという表舞台に出るのは本当に畑違いな感じがして、何をしたらよいのかよくわからないまま、とにかく無我夢中で事務局の仕事に取り組んできました。今ではなんとか様になってきたのかなと思っています。まだまだ新米事務局ではありますが、今後ともよろしくお願いします。 【発足六十周年を超えて】 岡山県高等学校演劇協議会は平成二十二年度に発足六十周年を迎えました。それを記念して、六十周年記念創作脚本集を出版しました。出版記念パーティーは、高演協顧問や元会長など、岡山県の高校演劇の発展のためにご尽力いただいた先生方や現役の顧問の先生方をお招きして、盛大に開催することができました。 【岡山県の今】 岡山県高等学校演劇協議会には加盟校が五十校あり(平成二十三年度)、中国ブロックでは最多加盟校数を誇る県です。 県内には、岡山・備南・備西・備北・旭東・美作の六地区があり、それぞれの地区で六月には実験劇場や春の発表会を開催し、九月下旬〜十月初めにかけては、県大会へとつながる地区大会を開催します。十一月初めには、地区大会を勝ち抜いた代表十一校が一堂に会して、岡山県高等学校演劇発表会を開催します。そこで県代表となった二校が中国大会へと駒を進めます。ここ最近、岡山県の代表校が中国大会を勝ち抜き、全国大会にも出場しています。 ◎過去十年間の全国大会出場校 ○平成十七年三月 春季全国高等学校演劇研究大会試行大会出場 岡山県立岡山一宮高校「HERO」(國米俊行 作) ○平成十九年八月 第五十一回全国高等学校総合文化祭出場 岡山県作陽高校「シャドー・ボクシング」(石原哲也 作) ○平成二十年三月 第二回春季全国高等学校演劇研究大会出場 岡山県立岡山操山高校「ホーム」(斉藤真琴 作) ○平成二十一年八月 第五十三回全国高等学校総合文化祭出場 岡山県立倉敷鷲羽高校「ゴトーを待ちながら」(日置浩輔 翻案) ○平成二十二年三月 第四回春季全国高等学校演劇研究大会(於:倉敷市芸文館)出場 岡山県立岡山操山高校「時には星くずのように」(岡田英里子 作) 岡山県立津山東高校「まゆみのマーチ」(重松清 作・高森章 脚色) ここに挙げた上演作品のうち、「HERO」「ホーム」「ゴトーを待ちながら」「時には星くずのように」が生徒の手による作品であり、「まゆみのマーチ」も顧問による脚色作品であるということは特筆すべきことだと思われます。 今後も優秀な作品を岡山県から全国へと発信していけたらと思います。 【今後の課題】 岡山県では、都市部の過密化と周辺地域での過疎化による学校の統廃合などの結果、加盟校数の減少、地区による加盟校数のアンバランスや部員数の減少などが問題になっており、岡山県全体で考えなければならないという状況にあります。現在は、地区割再編についての検討に取りかかっています。岡山県の高校演劇が活性化するためには具体的にどのような手立てを考えていけばよいか、何か新しい取り組みはないのかなどを模索しているところです。とても難しい状況で事務局を引き受けてしまったのだなと改めて思っているところですが、そこは乗りかかった船。できる限りのことをやって岡山県の高校演劇を盛り上げていきたいと思います。 (岡山県高等学校演劇協議会 事務局長) |
明すべってころんでおおいたけん 中原 久典 まさにそういった状況の大分県です。 加盟校は10校という極少県、しかも、ここ数年は県のコンクールで上演する学校は7校前後という危機的状況です。上位大会に出場できる可能性は確率から言ってもかなり高い! それはそれでうれしい! と、喜んではいられません。加盟校の多い県に比べ、わずか数校の中で県代表として選ばれることに申し訳なく思うことも当然としてありますが、やはり、一番の問題は裾野が広がっていかないことです。県大会に出場している7校のうち、大分市内の高校が5校という一局集中の状態です。地域に演劇部が全く存在しない地区が多数あり、そこには高校教育の中で演劇という表現活動に取り組んでいる高校生がいないことに一抹の不安を感じずにいられません。作り手がいないということは、観る側もいないということです。3年間の中で、同世代が演じる姿を一度も見ない高校生が少なくないのです。と、自虐的なことばかり書いてしまいましたが、そうした中でも、なんとか踏ん張っている現況をご紹介します。 大分県の県大会は第64回を数え、昨年60周年を迎えた大分県高文連の発足以前より行われていることになります。大分県高文連は全国に先駆けて昭和26年に創始されていますので、それより以前に行われていたということは、全国でも長い歴史をもっているのではないかと思います。全盛期の大分県は加盟校数が30校を数え、県大会にも20台後半の高校が参加しており、地区大会の実施も視野に入れていました。その全盛期に全国大会で上演されたのが、平成3年の竹田南高校「流氷とけて」でした。それからはしばらく全国大会から遠ざかっていましたが、平成19年・20年と、日田三隈高校が「ラビットアイズ」「ボタン」で連続出場を果たしました。それ以降、全国大会には届かなかったものの、平成21年・安心院高校「私のパパはモンスター」、平成23年・大分豊府高校「それでもだれかとつながってる」と、九州大会でも上位入賞を果たし、春季全国大会にも顔を出せるようになりました。 県下の演劇部員が一同に介して活動する大会は、8月の夏季研究大会、11月の中央演劇祭、2月の冬季演劇祭の3回です。夏季研究大会は他県でも行われている講習会ですが、大分県では参加者を4つの班に分け、班ごとに創作に挑戦します。すべての班が同じテーマのもとで、3日間で創作劇を作り、最終日に発表を行います。近年は竹田市内にある閉校した小学校を改装した施設「あ祖母学舎」を利用しています。自然に囲まれた中で、仲間と寝食をともにしながら過ごす演劇漬けの2泊3日は、生徒にとって刺激的なものです。 11月の中央演劇祭はコンクール形式の県大会ですが、大分県はこれまで地区大会が実施されたことはありません。今でこそ1日半ですべての上演を終えますが、20数校の上演校があった頃は、1日10校が上演をしていました。朝9:00から上演開始、最後は夜9:00過ぎに上演終了、それが3日間続くのですから、審査員の方々には、過酷な状況ではなかったと思います。現在は、すべての上演を1日もしくは1日半で終え、講師の先生によるワークショップや講演会を行っています。近年、会場としてお世話になってきた大分県立芸術会館が老朽化のため閉館したことにより、会場をどこにするかが目下の課題です。 2月に行われる冬季演劇祭は生徒創作のみを上演する大会です。上演校の生徒創作であることと、リハから上演までを含めて各校30分以内であることの2つを条件にしています。これは10年前から始まった新しい大会ですが、今では恒例行事として定着してきました。県大会に比べて、妙な緊張もなく、いい意味で肩の力もぬけ、ある意味、県大会よりおもしろい作品が集まるのもこの大会の特徴です。他校のリハの様子(と言っても、音響のレベル合わせや照明の色合わせぐらいですが)も見ることができるため、研究会の要素もあります。近年の九州大会における大分県代表の健闘ぶりもこの大会の存在に得るところが大きいと感じています。 平成25年には、九州大会が大分県で開催されます。ですが、前述したように加盟校数10校、県下の演劇部員が50名わずかという運営もままならない状態です。身の丈にあった大会運営をするしかありませんが、その身の丈も人並みではありません。背伸びをせず、まずは身の丈を伸ばすことから始めなくてはなりません。そのひとつとして、新しい大会を起こそうという動きがあります。コンクール形式ではなく、発表のみを目的とした演劇祭ができないものかと。これから増えていく(であろう)加盟校の発表の場の機会が少しでも増え、それを目にし、新たに演劇を志す高校生が一人でも増えていく、そんな思いを強くしながら、現在、計画中です。 すべっても、ころんでも、立ちあがるしかありません。これまでの長い歴史の中で、大分で高校演劇に携わってきた高校生の思いをつなげるためにも。 (大分県事務局長) |