タイトル   復刊第90号(静岡大会特集号)Web版

11.第二分科会
空間に発想を こめよう
  講師 島  次 郎

まず、ぼくのやり方について話すので、参考にして下さい。
 ぼくはデザインが専門ですが、演劇だと一年前に依頼が来ます。台本が来ると、まずさっと読み、二度目にはすべて無差別 に書き写します。三度目はじっくり読みどんな世界なのかつかみます。そしてイメージスケッチを、多いときには何十枚と描きます。
 並行して劇場を下見します。図面が違うときもあるので、必ずスケールで計ります。袖幕などとって空の舞台を見、客席の勾配など注意しながら、どんな風に見えるのか確認します。
 予算を聞いて、白模型を作ります。三十分の一から百分の一くらいです。大まかな平面 図や絵も作りますが、舞台は立体だから模型は大切です。百八十の人なら六センチかな、人形を置き、山台の高さなど調整します。演出や舞台監督や照明の人と打ち合わせる。どの角度で照明をあてるか。客席からどう見切れるか。意思の疎通 が大事です。  OKがでたら本模型です。マチエールごとに凹凸やよごれをつけます。新築の柱と四十年たったのでは違う。色をつけて、古さとか新しさを見せます。
 こんどは発注です。物ごとにサイズや材料を書き出して製作会社に依頼します。工場へは足を運びチェックします。トラブルを防ぐためにね。
 そして、仕込み。劇場に入れます。本番の三、四日前ぐらいにたちあげます。
 高校演劇の大道具を見ての感想ですが、なんにしても舞台を空間でとらえて欲しい。立体、空間の中で考える。大会毎に会場は違うけど何が可能か、どの寸法かを考える。そうして欲しい。
 今度の芝居では、使わなくてもいい作品までホリゾントを使っている。使うとローホリ隠しが要る。あれ何となる。リアルな芝居だと、ホリゾントがドーンとついてると、違和感を感じます。距離感を出すために使うのならいいでしょう。同じ目的でも、冷黒紗をつかって柔らかな明るさにする。ローホリ隠しもいらないという手もあります。伝統的にこうだからはやめて欲しい。とにかく見える物はすべて舞台効果 です。
 暗転も舞台の時間です。無の時間というのはやる側の約束。見る側には違う。暗転をどう活かすか考えて欲しい。尼崎北はうまかった。今回暗転中に走る人がいなかったのはよかった。吊り物とか、電鋸とか舞台はとてもこわい所。とにかくホリゾント、暗転、袖幕など、どうしても必要か、と考えた上で使って欲しい。
 例えば出入口も、真横から出ると決まったものじゃない。川之江は中割幕の後ろから出入りして、その向こうに台所と玄関がある形にしていた。斜めに出入りすることで奥行きが出た。置き道具とエリアだけで部屋が十分表現できていた。セットは物だけではない。俳優の動きや置き道具などと関連させ、芝居の内容とある部分でつき、ある部分で離れるのが大切。くっつきすぎると息苦しいんです。
 素材の話ですが、消防法の制限の中でも、いろいろなものを考えて欲しい。大会向けでは仕込みやばらしの時間制限もある。時にはそれ以外の場で、仕込みに何日かかってもいい、山梨までブドウの 葉っぱ取りに行って作った舞台だ、そんな感じで部活の中で遊んで欲しい。発想を面 白くして欲しい。