復刊91号  WEB版


3 都道府県だより 大阪府 

「大阪府の高校演劇創立五十周年を迎えて」 (中原英三郎)

 二十世紀の最後の年に、大阪府高等学校演劇連盟は五十周年を迎えました。二〇〇〇年度には、記念レセプションや記念出版等、半世紀のあゆみを振り返り、次の半世紀に向けての新たな一歩をあゆみ出すための企画が行われました。
 「連盟」の創立は一九五一年。新制高校ができて各校に演劇部が創られたものの、生徒に対して指導助言する教師はまれであるという状態を憂えた、故藤木邦夫先生(元全国協議会顧問)を初めとする数名の顧問教師による文字どおり手弁当・手作りの組織のスタートでした。ちなみに第一回研究大会の参加校は四十八校でした。  その後、「学園闘争」の嵐が荒れ狂った七十年前後の激動や二回にわたる全国大会の開催(七三年、八六年)、近畿大会の開催などを通 じて連盟は鍛えられて現在に至っています。
 本年度の加盟校は百三十二校。十地区に分かれての地区大会と十三校による二日間にわたる府大会とその合評会、年間三回の生徒向け講習会、顧問研修会、府芸術文化祭等が主な行事です。多い時には五百名近い生徒が参加する行事の企画・運営で二十五人の常任委員は息を抜く暇もない忙しさになっています。顧問の年齢層が高くなって職場での役割も大きくなる中で、高校演劇に対する情熱だけを支えに活動を続けています。
 その中にあって、毎年のように刺激的な脚本を執筆している顧問の活動は演劇部活動の水準を維持する上で大きな力になっています。さらに、特にこの数年間の生徒創作の水準の向上は大阪府の高校演劇の今後の飛躍にとって最大の保障だと言えます。彼らの創作意欲を育て、二十一世紀に入ったこの時代と向き合った優れた作品をどうやって生みだしていくか、その課題が百数十名の演劇部顧問教師に今突きつけられていると、私は感じています。
 大きくなった組織の活発な活動のためにはお金が要ります。大雑把に言えば三百数十万円の運営費の約三分の二が連盟加盟費や参加料などの各演劇部負担、三分の一が広告収入と府からの補助金というのが現状です。ところが、広告収入は不況の中で年々減少し、元々少なかった補助金も本年度は十万円台にまで減額されています。どう健全な財政運営を行うかということは大きな悩みになっています。あくまで自立した運営を貫きながら組織と活動を発展させてきた先輩教師の苦闘を継承しながら、大阪の高校演劇の一層の発展をどう図るかという課題が今突きつけられています。
 大阪の連盟は今年五十周年を迎えました。最大の企画は「記念CDR」の出版です。主な内容は次の通 りです。 生徒・顧問の創作脚本集(65編)研究大会の写真集 リハーサルの進め方(動画解説入り) 照明・装置・音響に関する技術講習内容(写真解説入り) *含むPCによる効果作成 五十年の歴史……など。
 きっと、全国の多くの学校でも活用していただける内容だと自負しています。なお、このCDRは、福岡で開催される全国大会の際にも実費で頒布する予定でおります。この拙文で触れられなかった活動の内容についても知っていただけるはずです。
 生徒数の減少に伴って部員減の悩みを抱えている演劇部も数多くありながら、それでも加盟校数が減少せず活動自体も活発になっていることには、大規模な講習会の実施や各地域で行われている合同公演などのほかに、連盟として開設しているHPを通 しての情報伝達にとどまらないネット上の交流活動も与って力になっています。  私たちは高校演劇を支援をしてくださる演劇人やホール関係者とも連携しながら、生徒達と一緒にこの困難も多い時期を乗り切って行こうと決意しています。 (大阪府高校演劇連盟常任委員)