復刊98号 福井(鯖江)大会特集号  WEB版


第49回福井大会によせて  永嶋 達夫
平成十五年の第27回全国高等学校総合文化祭(高総文祭)は福井県が開催地である。全国高等学校演劇協議会の全国大会としては第49回目となる。
福井はかの名高い近世の戯曲作家近松門左衛門の生誕の地であり幼少時代を過ごしたと思われる吉江の地はたまたま今回の演劇部門の会場となった鯖江市であるという。そのゆかりの文学碑は市内杉本町立待公民館前庭にある。
そういうかかわりからも、福井は地元の方々の余り目立たない所という謙虚なお話の先には、古い時代より京から北陸道に通じる北国街道の要所としての数々の歴史とともに都会とは異なる特色と雰囲気を備えた豊かな地方色を感じさせてくれる。有名な地場産業であるめがねフレームを屋上に掲げた「めがね会館」と向い合う文化センターにおいて、今年も全国八ブロックよりの11校がまたどんな舞台を展開してくれるであろうか。しばらくぶりの沖縄県よりの出場もニュースである。
高校生の部活動参加が多くの部において若干厳しい現実も伝られている。各校とも生徒数の減少という背景も無いわけではない。学校五日制が課外部活動の面にプラスと作用していくか、マイナスともなるのか。青少年の広く学校外活動の振興という受け皿の整備とも関連しようが、文化系体育系ともにいくつかの分野・種目では低年齢よりの参加・育成による高度の技量・専門性を目ざす民間クラブの存在も大きくなっている。演劇についてもそのような養成の機関は以前より存在しタレントとして活動している例も多く見られる。
いずれにしても、演劇が学校生活の中に取り入れられたのはこの活動が学校においても適した性質のものであったからであろう。二三人の部員でも成立しないとは言えないが、やはりある程度の人数による集団としてのまとまった活動としての意味が大きい。それに加えて、さまざまな立場と個性との共同体として作り上げていくという極めて創造的な活動であることが演劇の最大の魅力である。台本も常に創作劇が伝統的に多く見られるのもその一証左であろう。生徒自身の創作によるすぐれた高校演劇も珍しくない。そして演劇とはドラマであり、意外性をはらんだドラマティックな展開こそが身上である。演技やさまざまな舞台効果も大切な必要条件であるがそこで展開される舞台の流れが簡単に予測されてしまうことや、ドラマの効果に関係のないパフオーマンスは限界を感じさせてしまう。笑いと涙と、一見対局的な感覚が共存できるような劇としてのヒダの深さが面白い。生徒たちの新鮮なアイディアがその面においても今後さらに発揮されていくことを期待したい。なお、顧問の力の大きいことも事実である。強いチームにはすぐれたコーチの存在のとおり、高校演劇の今後のさらなる発展を考えたとき、顧問教員の専門性の向上は忘れてはならない。総合的学習の一環という組み入れも始まっている折柄、演劇専門機関への研修派遣の機会ももう一歩進められてよかろう。
福井大会に話を戻して、今大会より生徒講評委員会の活動を分科会の一つとして位置づけて正式に組み入れた。演劇を通して学習するという本来の趣旨の一環として生徒自身の立場からの批評活動の意義は申すまでもなく、すでに各地区で行われてきていることもふまえ、今回中部ブロックが行なってきたという実績を基に何度か検討の結果実施を見るに至った。顧問教員の間でも行ないたいくらいである。コンクール審査とは別にこの活動の意義が生かされることを願っている。参加校の増も目下一校増案をもって検討中である。年度内開催のことは、可能な地区と極めて難しいとする地区とが併存しており慎重に取扱いたい。
明年度は全高演協の50周年を迎える。記念事業にとどまらず全国各校の演劇活動発展の年としたい。
(全国高等学校演劇協議会会長)
(学校法人十文字学園十文字中・高等学校校長) ***天井桟敷****
いま時代のキーワードは「変わる」「チェンジ」「今日からは、きのうまでとは違う新しいア・タ・シ」である。社会や生活環境がめまぐるしく変わる中で、人間の自己変革はなかなか難しい。
しかし、いつまでも同じ所に立ちどまっていたのでは成長もしない。伝統を守ることも大切だが、その一方で過去の習慣にとらわれず、積極的に新たな一歩を踏み出すことも必要であろう。
この「演劇創造」も、記念となる第百号から紙面作りを大きく変えていこうとしている。まだ試作段階にすぎないのだが、広げると縦50センチ、横70センチぐらいの壁新聞にすることが改革の目玉の一つだ。それぞれの学校で一般の生徒の目に触れるように掲示板に貼ることを想定した。
「あら、何これ」「演劇部のことが書いてあるね。なんか楽しそう」と、これで注目度が高まるかもしれない。残念だが、とかく学校内では、演劇活動は体育系のクラブほど認知されていないのが実情である。「演劇創造」を見て、演劇部にも全国大会があることを知り、楽しく生き生きとした舞台写真を見たことがきっかけで演劇部に入部する人が増えたらいいな、と思う。
今後は、ますます内容の充実をこころがけます。みなさまのご協力をお願いします。   (藤原)