国立劇場・優秀校公演が終わると、いよいよ2017年度産高校演劇の栽培が始まる。全国各地で地区大会が開催される。もちろん、地区大会はおろか県大会まで終わっている県は知っている。が、大方は、9月10月が地区大会の時期だろう。そして今はその稽古で忙しい時期だろう。つまりほとんどの日本中の高校演劇部が高校演劇を創っている頃だろう。「高校演劇の秋」は高校演劇の春満開なのだ。
さて、これは、そんな演劇部のよくある話を実録風に追ったものである。(と言ってもこれで終わるかもしれない) 特定の学校ではないことを明記しておく。
その演劇部では、何となく秋作品は顧問が台本を書くようになっている。決まりはない、何となく、だ。この何となく、というのが一番いけない。決まりで、「書く」となっていれば、「それは理不尽だ!」と反論できる。「顧問は書かない」と決まっていれば、思う存分夏休みを謳歌できる。何となく、だと、書いた方がいいのか、書かないほうがいいのか、自分で部員たちの顔色をうかがいながら、夏休みの練習を過ごさなければならない。
「今度の作品は既成で行こう」と言うと、わずかに不満げな表情を浮かべるものの「はい、わかりました」と言い、「オレが書く」と言うと、特段うれしそうな表情になることもなく「はい、わかりました」と言う。いったい、どっちなのだ!
ただでさえ、書くのが遅いのだ。書く、というより、仕上げるのが遅いのだ。適当なシーンを脈略なく作っては、稽古しながら、無理やりつなげていって、破たんするということを反省もなく繰り返している顧問なのだ。
今年はそれでも少し反省して、早々に「既成作品で行こう。それは〇〇(作品名)だ!」と夏休みの始めに台本を印刷して渡して、「あとは練習しておいて」と、顧問は仙台での全国大会を観に出かけてしまった。そしてそのまま2週間姿を見せることはなかった。
2週間後、「さあ、どこまでできているかな。今年の夏は出だしが早いなあ。秋大会まで余裕だなあ。」と仙台での楽しい日々を振り返りながら稽古場に行くと・・・よくある話で一瞬で現実に引き戻されるわけです。
「やっぱり自分たちだけで創らせるって、ちょっと難しいよな。ちゃんと練習見よう。大丈夫時間はまだたっぷりある。しかも台本あるんだから。」なんて気持ちを切り替えたのが、お盆前。確かに夏休みはまだ3週間ある。
その2週間後。この2週間、稽古は全く進んでいなかった・・・。「もう一つ、別の作品やってみようと思うんだけど、どうかな。かなり直さなければならないんだけど」 ついに切り出す、いつものパターン。部員たちは、「この1ケ月をどうしてくれるんですか!」・・・・・・・・・・とは決して言わない。
どこへ到着するかわからない、ミステリーの船旅が、また今年も8月の末に始まった・・・。