例えばあなたが演劇部をもったばかりの新人教員なら

例えばあなたが演劇部をもったばかりの新人教員なら、何となくネットで見つけたこのページで、どこかのオジサンが(おにいさんかもしれないよ)、「もうすぐ全国大会だ、カウントダウンだ、熱いぞ、燃えるぞ、来たれ広島へ!」などどひとりで盛り上っているのを読んで、バカだと思うだろう。いや、その前にHPのタイトルに、「全国高等学校演劇協議会」という名称を見て、「これは危ない」と思うだろう。「演劇」を「協議」するとはどのようなことなのか。もしそんなのに入ったら、観た劇について10枚感想文を書かされるか、輪になって一人ずつ感想を10分ずつ言わなくてはいけないとか、その後協議しなくてはいけない、とか思うだろう。「君の演劇感は間違っている!」「もっと演劇を勉強したまえ。」「これだから今の若いやつは・・・」と協議会リーダーから言われると思うだろう。事務局ブログは極めて軽い調子で書いているものの、これは厳しい修業集団への誘い文句なのだろう。

 

「これは危ない」あなたは再び言って、別のHPにジャンプし、ついでに履歴も消すだろう。

 

そんな時、あなたの携帯に、「ねえ、広島で高校演劇の全国大会やるんだけどさ、一緒に行かない?」と地区の高校演劇の顧問から電話がかかってくるだろう。かなり年上の、いつも飲み会に誘ってくる、オジサン顧問だ。「行きません」と即答すればよかったのに、一応先輩教員だから「え、どういうことですか?」と聞いてしまったのがまずかったのだろう。その人はとても温厚で、話をウンウンとよく聞いてくれる、演劇部顧問にありがちな怪しさがない、気さくな人だったからだ。「いやね、一緒に行く予定だった人が、行けなくなって、入城整理券1枚余ってしまったんだよ。ほら、今年初めて顧問になったんだよね。せっかく近くで全国大会やるんだからぜひ勉強しておいたほうがいいと思ってさ。」

 

聞けば、他の演劇部顧問と4人で行く予定だったとのこと。車に分乗で、8月1日2日3日、3日間日帰り。一つ席が空いたので誘った。それにしても、入場整理券とは?高校演劇の大会に?大げさだなあ。しかし、若手教員は「勉強したほうがよい」という言葉に弱い。これは「勉強」なのだ。あの教団っじゃなかった、あの集団の「修行」とは違うのだ。

 

あなたはつい、「3日は用事があってダメなんですけど、1日と2日はいいですよ。」と行ってしまうだろう。気さくな先生は、「あ、そう、よかった」と「勉強」という言葉を巧みに使った自分を心の奥で褒めるだろう。

 

これであなたの、広島行き、人生初の高校演劇全国大会観劇体験が決まるのだ。「観劇したら感激するぞ」と電話の向こうのオジサンギャグにはあえて反応しないことにした。

 

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