もしかしたらあるかもしれない演劇部の話③

「もしある演部」は3月を迎えた。1月に全国大会に推薦され、実感のわかないまま「おめでとう」「おめでとう」と言われ、いつの間にか「祝 全国大会出場」の横断幕が学校の一番目立つところに貼られていた。実感がわかないのは、全国大会が半年以上も先だからだろう。この横断幕も半年以上掲げられるわけで、うれしい面もあるがプレッシャーがどんどん大きくなっていく面もある。そうこうしているうちに学年末試験に突入し、こちらは大惨敗だった・・・のかどうかは知らない。

 

さて、どこの学校もそうであろうが、ブロック大会作品はしばらくお休みである。学年末試験終了後は、新歓公演の稽古である。それに先立ち3月下旬に地区のフェスティバル公演がある。4校が集まってそれぞれ上演する。会場は、市内のとてもいい劇場。やりがいがある。

 

 

 

選んだ作品は4人姉妹の話だ。ヤンキーの次女の彼氏の両親に大幅な変更を加え、次女の金髪もウイッグという設定にしてしまった。健全さ漂うお話に生まれ変わった、と勝手に思っている。

 

さて、上演は3月下旬に1回、4月に3回、計4回とした。4回もやるのは、ほとんどのキャストはダブルキャストなので、2回ずつやるため。ダブルキャストは、昨年の文化祭公演で取り入れて以来、2回目。キャスト数に比べて部員が多いことからくる措置だがやってみるとこれがなかなかいい。

 

同じシーンの稽古を2回やるから稽古時間は2倍かかるかと言うとそうではない。まずこちらのこだわりがなくなる。シングルキャストだと求める動き、表現ができるまで、何度もやり直すことになるが、それを2回やってると時間があまりにかかるので、要求が減る。つまり作り過ぎないで、基本的な言い回しと動きを覚えていく。最初の頃はシングルキャストの稽古時間の1.5倍くらいから始まるが、すぐに、1.2倍、1倍となる。演技者の呑み込みも早い。同じ役を他人がやっているのを見ることは大きな効果があるのだろう。そのうち同じシーンを2回やらなくても、他方に「ここ、同じようにやっておいて」と言うと、自分たちで練習して次にはできている。

 

そんなわけで、「もしある演部」の旬はダブルキャストなのだ。

 

※この話は一部フィクションです。

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