わりとよくある演劇部の話①

県大会は11月20日あたりの週である。地区大会が終わったのが、10月の半ば。その間1ケ月ある。いや、中間試験があり、修学旅行もある。だから実質稽古日数は少ない。やれる日は全て稽古だ。稽古、稽古、稽古。台本だってあれも直したい、これも直したい。もっと精度を高めるのだ!・・・と思っていたのは、地区大会直前のハイテンションの時だった。地区大会が終わってみると、「ちょっとしばらく休もう。あんまりそれだけに関わっているのよくないよな。そうだ、芝居観に行こう。」とすぐに部活動から引き気味になる顧問である。やはりせっぱつまった時しか人間は、いやこの顧問はエネルギーが出ないのかもしれない。

 

会議だ、修学旅行の打合せだ、研修のための観劇だ、と適当な理由をつけて部活にいかない日々が続いた。そろそろ言い訳のネタも尽きてきた頃、演劇の本の中に「やはり体作りが基本です。強靭な体が演技力を高めるのです。」と書いてあった。「これだ!」と顧問は叫んだ。(電車の中だったので心の中で)

 

翌日、顧問は颯爽と稽古部屋に出かけ、久しぶりに会う部員たちを前に渋く言っ放った。(注:「渋く」は本人がそう思っているだけ) 「やっぱりさあ、芝居の基本は体だよ。強靭な体が演技力を高めるんだ。」とほぼ本と同じことを言った。素直な部員たちはうんうんとうなづいている。「さあ、これから階段の上り下り走って10往復ね。それから腹筋100回、スクワット100回、腕立て50回、それから・・・」 ふだんは柔和な部員たちの顔がみるみる曇っていった。それでも顧問の「体作り開始!」の声とともに30人もの集団が階段の駆け上り下りを始めた。上から降りてくる一般生徒たちはひどく迷惑そうだった。

 

顧問は思った。「つらいだろうが、がんばれ。これもよい芝居創りのためなのだ。」 よい言い訳を作って、うれしそうに顧問は職員室に帰った。

 

 

せっかくセットを立てたのに、部員たちは階段へ走っていった。

 

体作りに励む。

 

翌日から「スペシャルメニュー」が考案された。

 

※写真は全てイメージです。

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