8月31日ですね。1年で最も切ない日です。明日から2学期・・・。「とっくに授業始まっているよ」という方々が多いの知っています。ただ休みが長くなるほど、学校が始まる憂鬱さは増すものです。
しかし、そんな何も手が付かずジタバタしている中、これは報告しなくてはいけないと、熱い思いで書きます。(夏の暑さはどこへいったのか・・・)
国立劇場4作品はすべて最高の仕上がりをみせて上演された!
実は、全国大会終了直後の「優秀校東京公演打ち合わせ会」で、私は「皆さんの劇はまだまだ伸びしろがあると思うので、どんどん稽古して、国立劇場のきびしい観客を納得させてくださいね。」と超エラそうなことを言ったのだ。そしてその通り、納得させるどころか、笑わせ、泣かせ、愛され、客電がついても鳴り止まぬ大拍手を浴びたのだ。いやあ、よく稽古を積んだのだなあ。そして国立劇場のスタッフの皆さまがそれをがっしりと支えてくれたのだなあ。
国立劇場は、最優秀校、優秀校のお披露目の場ではないのです。全国大会までの道のり+与えられた20日間(お盆休み除いています)の成果の発表の場であるのです。
札幌琴似工業高校定時制「北極星の見つけかた」・・・担任の丹下先生の演技がぐっと安定感が増していました。プログラムを見れば1年生。4年生も混じる生徒役たちに対して、1年生で先生役をやるのは大変だったでしょう。冒頭の一番大事な部分、よく引っ張りました。「山田さん」は何て言うんだろう、存在自体も、セリフ回しも異彩を放っていて、彦根同様、国立のお客さんもとりこにしてしまいましたね。ラストの学校を去る仲間に向かって、スマホの光を使って北斗七星を作り、太い声でハッピーバスデーを歌うところなんか、書いているだけで落涙。上演後のインタビューも登場した4人とも感極まる状態で、これも会場の感動を誘っておりました。しかし、琴似は何とこの日札幌に帰るとのこと。1年を振り返って余韻に浸る間もなく、大急ぎで舞台セットをトラックに積み込み、大急ぎで楽屋を片して、羽田空港に向かったのでした。写真を撮る間もありませんでした。「山田さん」だけでもと思いましたが、やっぱり「山田さん」は舞台の上だけということで。
大阪府立緑風冠高校「太鼓」・・・幕が開いた途端、すごい舞台だと思いました。息を飲むというか。観客からの質問にもありましたが、広い国立の舞台にスモークがゆっくり漂い、照明がセットを浮かび上がらせて・・・。照明がすごいんです。上演後、国立劇場の大照明家に「『太鼓』の舞台照明すごかったですね。」と感想を言いました。大照明家は「少し(元のプランに)手を入れました。」と言いました。この「少し」の部分がプロの領域なのでしょう。「太鼓」は大照明家もノセてしまったようです。演技もその舞台に負けることなく、力強く、迫真のものでした。特に兵士の二人は大したものです。あれだけ緊張感を強いる1時間、あれだけ長いセリフを、1回もセリフをかむことなくやり遂げたのです。この学校も札幌琴似同様、昨年の主力メンバーが卒業で抜け、4月からキャストを入れ替え、1年生を入れてここまでやってきました。1年生も大したものです。あの青年役が1年生とは!顧問の吉田美彦先生は、役作りに際して、こういう動きとかこういうセリフのいい方とかあまり形のことは言わず、どんどん戦争の資料や当時の資料を渡し、読ませ、内面から役を創らせたそうです。へえ、そういうやり方もあるのかと感心してしまいました。でも相当忍耐と時間が必要だったでしょう。中身から役作りをしたということがわかるのが、これも上演後のインタビューです。登場した兵士の二人は、決して兵士から高校生に変わることなく、兵士のまま、戦争の悲惨さや平和の尊さを訴えたのでした。心から外に向かって役作りをしたのですね。
香川県立丸亀高校「用務員コンドウタケシ」・・・この作品は国立劇場に似合うだろうと書きましたが、その通り、ラストの応援団の演舞が舞台に映えること。観客大喜びでした。それよりも何よりも、「この作品、こんなに面白かったっけ?」と新発見及び再認識。思えば演舞に至るまでの50分は、応援団部室内での、団長引継ぎと用務員さんをめぐる、リアルタイムの話し合い。それをあれだけ面白く仕立てられるのはめったにできることではない。間とテンポが絶妙で、そこに観客の笑いがすっ、すっと入っていく。気持ちがいい。「本当に新入部員は増えたのか」シリーズの、笑いの間を3秒取る祐一郎に見せてあげたい。(と言うか、祐一郎は滋賀大会にも国立にも行ったはずである) 香川県や四国の先生方の話から想像するに、県大会からブロック大会、そして全国大会から国立へと、作品の伸び率で言えばこの作品が一番高かったのではないか。いわゆる「化けた」というやつですね。亀丸応援団、じゃなかった、丸亀演劇部、畏るべし、である。演舞の後、団長が向こう(観客席側)にいるコンドウさんに向かって言う。「コンドウさんっ!・・・俺たちが引退しても、こいつらのこと、応援してやって下さいっ!」 その時、観客の誰もがコンドウさんになって、「おお、わかった」と心の中でつぶやいたのではないだろうか。
大分県立大分豊府高校「うさみ君のお姉ちゃん」・・・全国大会では群を抜いていた完成度と安定感の大分豊府。しかしさらにそれを1カ月近く持続させるのは難しいものである。しかしさすが大分豊府。わりとフラフラ出歩く中原久典顧問に比して、部員はしっかり稽古を積んできた。そのどっしりした安定感を産み出す元は、やはり「お姉ちゃん」(あかね)である。彼女がしゃべった途端に舞台はどっしり安定する。彼女の声は、観客席の隅々まで、舞台の裏の通路まで、もしかしたら劇場の外まで響き渡る。「あんたたち、あたしの言葉一言でも聞き逃したら許さないわよ」と言わんばかりの迫力である。「お姉ちゃん」のファンは私の周りで老若男女問わず多い。教員としても、うるさい生徒(教師?)に向かって、自分の代わりに「あんたたち、黙りなさいよ」と言ってもらったらどんなにありがたいことか。「お姉ちゃん」が溝呂木に言う。「逃げちゃダメ!」それを私は自分へのメッセージと受け取った。よし、明日から学校へ行くぞ。(この項の冒頭の書き出しはここにつながるのです) 溝呂木の嗚咽絶叫のアンパンマンの歌は3度観た中で最高に落涙。保健室に戻る溝呂木の背中が最高に哀しい。そして夕陽が最高に美しい。昨年の「教室裁判」でも書いたが、国立の夕陽はとにかく美しいのである。前の「コンドウタケシ」でも同様。終演後多くの方から、「2日間の本公演を締めくくるのにふさわしい作品でしたね。」と言われました。やっぱり滋賀ブルーTシャツの大分豊府は力強かったのです。(ところでフラフラする中原顧問は、最初の笑いが起こるまではドキドキし、劇の最中もずっと笑いを気にしているそうです。それは若い時の祐一郎に似ています。)
と今日はここまで。本当は撮った写真とか並べて解説していきたかったのですが、ちょっと時間も遅く。明日以降、少しずつこのページに加えていきます。
うさみ君のお姉ちゃんはこういうでしょう。「逃げちゃダメ!」 そして 「寝なきゃダメ!」と。
すでにお家に帰って、ゆっくり休んでいるであろう(もしかして勉強?仕事?)上演校の生徒の皆さん、顧問の皆さん、お疲れ様でした!