B いよいよ、全国８ブロック９会場で開催されるブロック大会も終盤戦に入って来ました。今週と来週、そして東京の超年末で終了です。その間５ブロック６会場で熱戦が繰り広げられるのです！！！！！
C あのさ、一人で何盛り上がってるの。！マーク付けすぎでしょ。
A 熱戦と言う風に、スポーツの試合のように例えるのは感心しませんね。私たちは常に、高校演劇の大会は戦いじゃないんだ、と自覚すべきです。
B そうでした、失礼しました。５ブロック６会場と言ったところで、そんなにまだ残っているのかと思ったらうれしくて興奮してしまいました。訂正します。熱戦ではなく、熱い舞台が繰り広げられる、とします。
A まあそれならいいでしょう。
B Aさんはいつも冷静ですね。
C A君はまだ若いのよ。もう少し気持ちを柔らかく、大きく持たないとこの世界やっていけないよ。
A （小声で）Cさんは柔らかすぎだと思います。
B では今週の本題に入りましょう。今週のブロック大会は、ジャン！
C それにしてもこの企画、しぶといよね。まだ続いているもんね。
A 私は先月の、近畿・中国ブロック大会で終わりかと思っていました。さすがに１２月になって呼び出されるとは思っていませんでした。この時期、本当に忙しいんですから。
C オレもそうだよ。ほら、師走ってやっぱり先生も走るくらい忙しいんだよ。娘のクリスマスプレゼント選びで、毎晩遅くまでネット検索で大変だよ。
A （小声で）娘がお父さんの趣味が悪くて嫌がっている、ということをぼくは知っている…
B （ようやく静まったところを見計らい）ジャン、ジャン！ 九州大会です。
C ほう、九州か。いいねえ。宮崎の全国大会とか長崎の全国大会とか懐かしいねえ。「ああああ、長崎は～今日も雨だった～」
B Cさん、神戸の近畿大会の時も「神戸～、泣いてどうなるのか～」って歌ってましたよね。内山田洋とクールファイブ好きですね。
C そうなの、オレの人生歌なの。
A （無視して）１６日（金）１７日（土）ですね。
C ああ、金曜日入るのかあ。忘年会もあるし、今度の金曜日、ネットで特売やるんだよね。他に土日でやってるブロック大会はどこ？
B ありません、単独です。
A そうです、ここ数年九州大会は東北大会と重なることが多かったのですが、東北大会が１週後になって、この週末のブロック大会は九州だけです。
B 今年の特徴「重なるブロック大会」の中で、とてもラッキーな日程となりましたね、九州大会は。
C 北海道も単独だったし、南と北が単独って言うのもいいね。あれこれ考えずに飛行機乗ればいいんだから。で、今年の九州大会は、ど…
A （スクッと立ち上がり興奮気味に）沖縄です！
C え、沖縄！おきなわ！オキナワ！OKINAWA！めんそ～れ沖縄！
B はい、沖縄県は浦添市、浦添市てだこホールです。
A （かなり早口で）浦添市は那覇市の隣。空港から車で３０分、那覇市内からもバスが出てて便利かと思います！
B どうしたんですか、Aさん。先ほどまでの冷静さが全くないじゃないですか。
A （やっぱり早口で）だって、だって、８年間待ち続けてきたんですよ、この沖縄大会を。九州ブロックは、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の８県。開催は８年に１回。最も１順のサイクルが長いブロックです。ようやく、ようやく来るんです、沖縄大会が。前回はボクは、ブロック大会巡りなんて言うあやしいことはしてませんでした。さらに沖縄県で全国大会が開催された時（1992／平成4年）、ぼくは教員にもなっていませんでした。３年前にこのあまりにあやしい同好会に加入以来、ずっとずっとこの日を待っていたんです。いや、このバカみたいな同好会に加入したのは、大手を振って沖縄大会に行く口実のため、と言っても過言ではない！
C 何かけっこうひどいこと言ってるね、ブロック大会巡り同好会のこと。
B 沖縄大会に行ったら、同好会辞める勢いですね。
A いや、ボクは辞めませんよ！
B よく言った！
A 少なくとも８年後の沖縄大会までは。
B やっぱりそこ。
C でもさあ、A君が沖縄好きなのはわかるけどさあ、何年かに１回は行ってるだろ、修学旅行で。
A 違う、違う、違う！ぼくは沖縄で高校演劇が観たいんです。ぼくの目標は４７都道府県全てで高校演劇を観ることです。そして最も行けそうにない場所、沖縄にブロック大会が回って来る。これこそ千載一遇のチャンスじゃないですか！
B Aさん、落ち着いて落ち着いて。最も行けそうにないって、オーバーでしょう。飛行機はたくさんあるし、安いツアーもあるし、今は１泊２日で沖縄に行く人も多いですよ。
A 違う、違う、違う！ぼくの言っているのは、家族の了解です。いいですか、妻も子どももいる、しかも小さいのが二人いるこのぼくが、「ちょっと一人で高校演劇観に沖縄行ってくる。」とふつうに言って理解されますか？
C ああ、それはアカンねえ。オレも１１月に北海道の大会に行って、劇観て、うまいもんいっぱい食べて家に帰ったら、しばらく家族から口聞いてもらえなかったよ。
A Cさんはいいんです、もうとっくに諦められているんですから。それに対してぼくはまだこれからなんです。夫として、父としての正しい道を歩かねばならないんです。
C 早くその道から降りたほうがいいよ～。
A そんな時にそんな時に、８年に１回とか、ブロック大会巡り同好会所属って言うのがキクんじゃないですか、家族の説得に。「同好会にBとかCって言うのがいてさあ、しつこいんだよね、だからさあ、今度だけは行かせて、次は絶対あいつらの口車に乗らないからさあ…」
B ひどい！そんなこと奥さんに言っているんですか？
C しかもオレたちのこと呼び捨て。悪党呼ばわり。
A と言うわけで、めでたく妻の了解を得ました！沖縄３泊４日手配済みです。日曜日はゆっくり海見てから帰ります。
B いいなあ、いいなあ、いいなあ。私は家庭の諸事情があって行けないからなあ。
C 何だよ、A君、一人で行かないでオレも誘ってよ。
A 誘ったじゃないですか、何度も。でもいつも「クリスマスのプレゼント、娘のクリスマスプレゼント！」って全然聞いてくれなかったじゃないですか。
C え、そうだっけ？
A （再度落ち着いて）Cさん、Cさんもそろそろ子離れした方がいいと思いますよ。娘さん、高校生ですよ。
C ・・・
A 高校生の娘へのプレゼントに、熊のぬいぐるみをネットで探しているおとうさんって言うのは、正しい父親とは思えませんが・・・少なくともボクには。
C （がっくり膝を付き）A君は、娘が熊のぬいぐるみを気に入らない、とでも言うのかね…
A Cさん、一緒に沖縄大会に行きませんか？
C え？
A 浦添で高校演劇を観て、その後娘さんへのプレゼントを探しませんか。星の砂なんてどうでしょう。
＊フィクションです。（こう書かないと「何だよ、来なかったじゃないか」と言われることが多くなってきたので）
