そんなわけで、公演会場である多摩美術大学へ。
多摩美術大学、初めての訪問。現勤務校には芸術科とう美術・工芸に特化した科(学年1クラス)があり、進路決定シーズンになると、タマビ、ムサビ、ニチゲー、ゲーダイなどの学校名が飛び交うが、それらの学校には全く行ったことがなかった。トーキョーゲーダイなどは今そのかなり変わった学生像を描いた本が話題になっていて、やはりどうしても美大とか芸大というのは、行く時に不安と期待が高まる。それに何と言ってもタマビと言えばユーミンだ。
場所は東急大井町線「上野毛(かみのげ)」というところにあった。音から頭髪の聖地にも聞こえるが、近くに自由が丘があったりして、おしゃれっぽい街である。というか、このあたりは街のどこに行っても落ち着いていておしゃれである。
駅から歩いて約5分、あこがれのタマビへ。
早速の上演案内。
演劇スタジオがあり、意外に演劇大学っぽい。
昔の大学演劇サークルと言えば、このような小屋のような場所で、メラメラと演劇を創っていた。だいたい2浪して3回くらい留年している、見た目は30歳くらいのひげをはやした長老のような先輩がいて、下宿に帰らず稽古場で寝泊まりしていたものだ。そんな人に会うと大学生になったんだなあ、と思ったものだ。
公演はこちらの新しい建物の中のスタジオで行われた。
この公演はすごかったなあ。ホントに第九全曲かけました。第九ってのは4楽章からなっていて、トータルで80分くらい。最後の第4楽章が有名な合唱が入るやつです。楽章と楽章の合間にベートーベンが出てきて、彼の人生の一コマを演じていくのだが(ここも面白かった)、音楽が始まると、まさに第九で大工で、大工さんたちが家を創り、国家を創り、世界を創っていく、まあ壮大な話なのでした。そして演出や演技も壮大で。
音楽とセリフがリンクしているのですね。つまりティンパニーなど打楽器系の音など盛り上がるところがあるでしょう、その時のセリフが決まっているのです。楽章のラストの音とセリフも同じタイミングで言います。第九はもちろん生演奏でないから、役者が全部音楽に合わせてセリフを言っているのですね。セリフだって1人で言ったり2人で言ったり集団で言ったりするわけで、しかもずっとしゃべっているし、しかも時として20人以上の役者が動き回るから、音もちゃんと聞こえているかどうか。1秒のずれも許されないってことですよね。う~ん、どうやって稽古したんだろう。
高校演劇の大会だと60分という枠が決まっていて、それに収めるのに苦労して、通し稽古しては、昨日は59分30秒だった、今日はみんなの調子がよかったので、58分50秒だったなんて言ってるけど。もちろんプロだって日によって2、3分の違いはある。いやいや作者がのってしまって日に日に新しいシーンを付け加え、楽日は初日から30分延びた、なんてこともある。
この「大工」は、CDが82分15秒だとすると、芝居も82分15秒なのだ。(プラス楽章の間のベートーベンの話) 生である演劇の自由さを逆手にとって制約の中で産みだされた学生たちの圧倒的なパフォーマンス。感銘を受けました。