【突如元旦の宴の前に打ち切った前編から続く】
2日目午前、プレイハウスは完全に総帥H氏のアンダーコントロールとなった。
しかし、H氏の野望はここで終わらない。午後になると一転険しい表情となり、受付周辺を落ち着きなくうろうろし始めたのだ。視線は常に1階の劇場入口に向いている。総帥H氏に心酔しているAさんは言う。
A 昨日お友達になったので、今日も声をかけさせていただいたんです。ちょっとピリピリした感じで怖かったんですが。ボク「Hさん、とてもこのシステムうまくいっていますね。ボクこれ大好きです。」するとHさんは「いや、本当にこのシステムの正しさを証明するにはまだ至っていないのです。一見満席のように見える公演もありますが、実はまだ印刷して用意した立ち見席券を使うまでいっていないのです。立ち見席を使用しながら入場できない人がいない、絶妙のバランスで入退場を管理できることを実証しない限り、このシステムは完璧とは言えません。」とNo.2であることをよしとしない、トウキョウが誇る頭脳集団の総帥H氏は、どこまでも自らに厳しかったのです。
総帥H氏のコンピューター頭脳はすでに午後の上演のシミュレーションをしていた。大会最後の2本、トリ、オオトリは東京代表の早稲田大学高等学院と神奈川県の大船。くじで決めた上演順とは言え、まさにH氏の野望を満たすラインナップである。早大学院はいかにも観客を集めそう。大船は関東常連であるが、実は4年ぶり満を持しての関東登場である。大船の名の通り顧問も巨漢なら演劇部体制も巨大。多くの大船サポーターを集める。神奈川県立青少年センター(来年2018年3月春季全国大会開催!)で開催された関東大会で200人近くがその公演に入りきれず神奈川入場受付案内チームが途方に暮れたことが記憶に新しい。今回の予約システムでも早々に完売したのが大船である。
案の定、午後になると並ぶ方が増え始めた。
総帥H氏は頭脳コンピューターをフル稼働させた。予約に対する実際の来場率の平均を過去の都大会のデータから引き出し、当日来場者数の予想を、12月30日の一般的人々の動向から割り出し、コアな高校演劇ファンの動向を足し、当日の天気(快晴・穏やか)を掛け合わせ、その他池袋周辺の人の出具合とか、御徒町アメ横方面の情報を入手し、とにかくいろんなものをかけたり、足したり、引いたりして、結論を導き出した。
総帥H氏はクールに言った。「いける」
大勢の当日券待ちの人々。総帥H氏はクールに吠えた。「立見席、出します」
こうして関東大会東京会場最終公演は、立見席を使用し、本当の意味で満席になった。
総帥H氏は言う。「大船は、当日券97、キャンセル待ち180名の方にお入りいただけ、立見席をふくめて二階まで全席埋まりました。」
総帥H氏は完全に勝利した・・・いや、違う。H氏はこうつぶやいた。「2名の方にお入りいただけなかった。このシステムはまだまだ完璧ではない。修整を加えなければ・・・」
関東大会東京会場は、予約入場システムが入ったが故に、幕間さえも演劇チックとなり、よりお祭り感を増して終了した。
A Bさん、一人自分に酔ってちゃダメですよ。またフィクションの世界に入ってますよ。関東大会の報告が、いきなり総帥H氏のストーリーになってますよ。
C ホントに総帥H氏っているの?それと思い浮かべる人はいるけど。ダメだよ、その人に迷惑かけちゃ。
B すみません、半分フィクションと半分創作とお考えください。さて・・・ここからはフィクションではありません。
A どうしたんですか、改まって?
C この一年間で一番真面目な顔しているな。
B ブロック大会巡り同好会を今日をもって解散します。
AC (絶句)
B 私は思うんです。ブロック大会巡り同好会、会員数約5人。年に一人3ブロック回るとして、延べ15ブロック大会。そして費用もかかる。家族も犠牲にする。
A 確かに。
B でも15人が年に1回他ブロック大会に行けば、それも15ブロック大会。私はそっちの方が価値があると思うんです。
A 確かにブロック大会を巡りはしないけれども、他のブロック大会に行く人、行きたいと思っている人はたくさんいます。今年の四国徳島大会には広島勢以外にも、鳥取・山口・岡山・大阪から来ていました。
B はい、今回の大会にも、宮城から、大阪から、広島から、日帰りで家族で岡山から来ていただきました。
C 家族って言うのがいいねえ。オレも今年は年に一回家族でブロック大会行ってみようか。
B そうなんです、ですからブロック大会巡り同好会は解散して、「ブロック大会訪問同好会」を旗揚げしようと思うんです。会員規約は「年に1回他ブロック大会に行く、または行けなくても行きたい気持ちを持つ」だけです。
A 行けなくてもいいんですね。
B そうです、行きたい気持ちがあれば。ただ他ブロック大会に行く精神的ハードルは高いものです。だから私たちが一緒に行きましょうと誘うのです。
A つまり私たちはやっぱり巡るということですか。
B まあ、それは皆さんの判断に任せます。
C 「ブロック大会訪問同好会」って名前がイカさないな。
B その点はこれから考えていきます。まだ北海道のブロック大会まで10か月以上ありますから。
C 10か月か、長いなあ。
A でも3月には岐阜大垣で春季全国大会、8月には仙台で全国大会がありますよ。そして演劇部顧問として新入生歓迎公演とか地区発表会とか地区大会がありますよ。ブロック大会を観る前に、まずそこに出ることが私たちの本当の目標ではないですか。
C そうだった、そうだった。こうしてみると、今年1年本当に忙しくなるなあ。
B 忙しいけれども充実しているではないですか。私たちはずっと一年間お祭りをしているようなものです。
A まとめましたね。
C ちょっとムリヤリ感あるけどね。
B では少し休んで、3月に岐阜大垣で会いましょう。お疲れ様でした。
ABC お疲れ様でした。
緊急座談会のモデルにされたとされる、(左から)Aさん、Bさん、Cさん。大変お疲れ様でした。
Aさん、Cさんがエールを送る宮城全国大会実行委員長(中央Sさん)。1年間がんばってください。