よくある演劇部の話④

文化祭での上演は80分であった。これを地区大会用に60分に縮めなければならない。難題の始まりである。

 

80分というのは、意外といい時間に収まったな、と顧問は思った。若いころ、文化祭の当日の朝に初めて通し稽古して、120分だった時の衝撃に比べたら、ずっと気持ち的には楽であった。

 

しかしいったんカット作業をしていくと、120分を半分に縮めるより、80分を60分にするほうが難しいのではないか、と思えてきた。余分な贅肉を切り落とすがごとく、バッサバッサとカットし、時には5ページカットした時の快感。今はそれができずにもがき苦しんでいる。どれも必要なシーン、必要なセリフに、必要な動作に見えてしまうのだ。「年を取ったんだよ」と心の声がささやく。「はい、その通りです。」と返信した。

 

台本編集中をいいことに、部活には顔を出さなくなる顧問。部員たちは、また放置状態におかれた。それでもけなげに、舞台セットや小道具、衣裳を作っている。

 

※写真はイメージです。

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