8月28日(日) 優秀校東京公演2日目。そして「高校演劇の夏」完結の日。
突然東京は涼しくなった。推定気温、24度。秋の装い。季節的にも確実に夏は終わりに近づいている。
散歩をしたくなる気温。国立劇場は皇居の近くだったことに気付く。皇居1周のマラソンコースなのだろう、ランナーに次々追い越される。ランナーにも超速い人と超遅い人がいる。このあたりを歩くと、つくづく東京は美しい町だと思う。今度皇居一周散歩などをやってみよう。
この日は、昨日よりも並んでいる方々が多い。日本音楽が始まっても並んでいる方々がかなりたくさんいる。演劇目当てか。本日も期待大。
ところでオープニング。高総文祭開催県の広島県より参加した、広島県立加計高校芸北分校による「八岐大蛇(やまたのおろち」。いやはやすごかった、おそろしかった、八つの大蛇の群舞、大きくなったり、うねうねしたり。退治する者との決闘も、アゴをガチガチさせて挑んでくるその動きの速さと言ったら。動きが速いんです。ローラーでもついてるのかしら、と思うくらいに。
全校生徒86名。全員が第一部活動の運動部に所属しているそうです。そして運動部が終了した後、第二部活動として「神学部」があり、郷土の伝統芸能の継承に努めているとのこと。頭が下がります。
都立駒場高校「江崎ヒロがいなくなった」・・・都立駒場は東京の高校演劇では人気校、満席です。舞台も、40人以上の部員が、広い国立の舞台を所狭しと駆け回り、集団演技で見せ場を作り、アップテンポで転換、ストーリーも転換して行きます。なかなかやるなあ。ゲネプロと本番の2回観てしまいました。
埼玉県立芸術総合高校「解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」・・・東京、埼玉と続けば、満席状態が続く。この作品、今回で3回目(ゲネプロ入れて4回目)になるけど、観るほどに素敵な作品であることに気付いていく。自分の学生時代をふと振り返ったりして。(女子大生ではありませんでしたが) 美しい照明、美しい音響、美しい身体の動きと、まさに芸術高校が創った芸術作品ですね。国立劇場照明の大御所も、この作品に一番凝った、と言っておられました。私は常々、「芸術総合高校・イン・さいたま芸術劇場」と、関東大会での芝居と劇場のマッチングを言うのですが、「芸術総合高校・イン・国立劇場」も誕生しました。
岐阜農林高校「I s (あいす)」・・・開演時間は18時15分から。オーラス、オオトリの演劇部門最優秀作品。時間は遅いが、観ていってほしいなあ。よかった、ほぼ満席状態。日曜日のこの時間、これだけの観客、初めてではないだろうか。でも観てよかったでしょう。バスケットゴールが揺れて観客をどよめかす、バスケットの技に感嘆させる、アイスが出てきて感心させる、トラックが出てきて大喜びさせる、バス停のブロックに拍手させる、笑わす、泣かす、そして目いっぱい感動させる、といくつもの使役動詞を使って緞帳が降りる。驚いたことに、客電が点いても拍手が鳴りやまないんだな。それだけ感動の気持ちを表したかったのでしょう。一部ではスタンディングオベーションもあったよう。プロならカーテンコール5回状態。圧巻、圧倒のオオトリ芝居で、優秀校東京公演全日程を終えることができました。演劇部門として誇らしかったなあ。
インタビューで質問された「I s (あいす)」の意味。①I は男の主人公・愛地の I、s は女の主人公・s の s。(へえ、そうだったのかあ。観客席もざわつく。) ②be動詞の is で「存在」を表す。(おお、深い。観客席も感心する。) ③アイス。(これはわかる) ④愛す。(おお、そう来たか) ⑤いちごの指導教員・五十嵐の I。(つまり s がついて「五十嵐たち、五十嵐一派」ということか。) ⑥個の私(I)が一人ひとり生きている。(都立駒場の「Is(アイズ)」ですね。) ⑦とにかくいろいろな意味がある。(そう、それを考えるのが楽しい)
ゲネプロ後の清楚な姿。まだ女子大生を生きている。
本番が終わり、フツーの高校生に戻る。これから「解体されゆく・・・」の世代に入っていく。地区大会は来月だ。
大喝采の余韻に浸る間もなく、トラックに荷物を詰め込む岐阜農林。バスケットゴール付きアイス製造マシーン、トラックも、バス停の一部も消えていく。寂しいね。
表彰およびお礼の言葉。岐阜では県大会まで終了している。何と全国大会の3日後が県大会だったのだ。地区大会(新作)⇒全国大会⇒県大会(新作)⇒国立劇場 と怒涛の夏だった。本当にお疲れさまでした。
最後に岐阜農林に、スタッフの皆さんから特別な賞が手渡される。1校にのみ与えられる栄誉ある賞だ。
副賞は、「特製なぐり」だ。これでまたバンバン作るぞ。
上演終了後約50分。退出。
岐阜農林が去り、「高校演劇の夏」が終わった。
*本日(8月30日)の朝日新聞、文化・文芸欄に演劇部門の様子が載っています。